保身が最優先で性被害事件をもみ消し続ける
ストーカー、強制性交、盗撮など……鹿児島県警の警察官が、相次いで性加害の不祥事を起こしていることは、確実に野川本部長の責任問題につながります。もし、自分のクビを最優先に考えて「もみ消し」をし続ける本部長の不正に直面し、良心に耐えかねて、退職後に「告発」にいたった行為だとしたら、本田・元警視正の行動は、むしろ公益通報保護制度によって保護される対象として扱われるべきものなのです。
なんでも秘密にしたがるのが警察。なんでもキャリア官僚がエライのが警察という組織の特徴です。
私自身、かつてジャーナリストの江川紹子さんと、当初からオウム真理教の関与が疑われていた「坂本弁護士一家行方不明事件」を追いかけているとき、神奈川県警が絶対に、この事件を「拉致事件」と認めず、「失踪事件」として押し通していたことに、愕然とした体験があります。
当時の県警本部長は、人事異動まで数カ月、拉致事件なら未解決事件となり、彼の経歴に傷がつく。これが警察の本音です。「拉致」と「失踪」では、捜査体制も捜査陣の意気込みもスピード感もちがいます。あのとき、大々的な捜査をしてオウム真理教を徹底的に捜査しておけば、松本サリンも地下鉄サリンも防げた可能性さえあるのに、一キャリア官僚の経歴を守るために、その機会を自ら放棄したのです。
その結果、オウム真理教という怪物は、あの時点で「何をしても大丈夫」と自信を持つようになってしまいました。今回、明るみになった一連の警察の「もみ消し」未遂事件の中には、強制性交事件の容疑者が警察OBの息子という事件もあります。絵に描いたような隠蔽策です。こんなことを許しておいていいのでしょうか。
社団法人日本新聞協会と社団法人日本民間放送連盟は「報道機関で取材活動に従事するすべての記者にとって、『取材源(情報源)の秘匿』は、いかなる犠牲を払っても堅守すべきジャーナリズムの鉄則である。隠された事実・真実は、記者と情報提供者との間に取材源を明らかにしないという信頼関係があって初めてもたらされる」としていますし、最高裁は「取材源の秘密は、取材の自由を確保するために必要なものとして、重要な社会的価値を有する」と述べています。
たしかに、鹿児島県警とモメ事になれば、地元の新聞社は記者クラブに依存しているだけに困るでしょう。それでも、地元の新聞社は頑張って記事にしています。だからこそ、新聞協会や日本民間放送連盟といった、もっとも大きな組織こそ、鹿児島県警および警察庁に対して強烈に抗議し、二度とこのようなことが起こらないように徹底的に問題を報道すべきなのです。また、これは、日本国憲法によって保障されている自由に対する侵害なのですから、国会の場でも、野党を中心に厳しく追及するべき問題です。