汚部屋が創造性を増す?

コロンビア大学ビジネススクールのエリック・アブラハムソン教授は、「良いアイデアは異なる要素が組み合わさって生まれる。散らかった環境では新しい組み合わせが生まれやすい」と指摘していることが有名です。

これは私の経験とも一致しています。散らかったデスクで作業していると思いもよらなかった意外なアイデアの連鎖が生まれることがあります。例えば、一見無関係な資料が目につき、それが新しいプロジェクトのアイデアにつながることもあるのです。

アブラハムソン教授は「だらしなさ」についての本も書いており、創造性にはある程度の乱雑さが不可欠だと主張しています。彼は、「散らかっていることで、つながっていないものがつながる」と述べています。これについて調べ物をしていたところ、面白いエピソードを見つけました。とある科学者は、非常に乱雑な机で仕事をすることで有名でしたが、ある日書類の束からたまたま二通の手紙を発見して、その差出人である二人を引き合わせたところなんとノーベル賞に繋がったというのです。なんともありそうな話ですが、調べてみてもどの二人なのかが出典が出てこなかったので、都市伝説にすぎないのかもしれませんね。でも本当だとしたら面白い話です。

2013年にミネソタ大学の研究者キャスリーン・ヴォースらの研究では、被験者を整頓された部屋と散らかった部屋に分け、ピンポン球の新しい使い方を考えさせました。その結果、散らかった部屋にいたグループの方が、思いもよらないような創造性あふれるアイデアを思いつく確率がはるかに高かったというのです。さらに、フローニンゲン大学の別の研究でも、散らかった部屋にいた参加者の方が、よりシンプルで効率的な解決策を見つける確率が高かったと報告されています。

これらの研究結果は、乱雑な環境が、枠を超えた拡散的な思考を刺激し、創造性を向上させる可能性があることを示しています。整理された環境ももちろん重要ですが、適度に乱雑な環境も悪いものではないのかもしれませんね。

写真=iStock.com/CasarsaGuru
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私の本棚には、色々なジャンルの書籍や雑誌がアトランダムにおかれていますが、それをぼんやり眺めていると、新しいアイデアやインスピレーションが湧きやすいです。本棚の隅にある古いレポートから新しいアイデアが浮かぶことがあります。これらの古い資料は、知識の再発見とも言えるもので、それを断捨離してしまうことは、私にとって脳の一部を失うようなものです。あの本どこいったっけと探す羽目になるのが玉にきずですが。

どうやら私たちは、ものが片づいているときはあらかじめ決まっていることに固執し、反対に散らかっていると、自由に発想できるようになるようなのです。確かに、あまりに綺麗に整っていると散らかしたらまずいと思って、現状維持を意識することに注意が持っていかれます。

以上のことから、ルーティーンワークや単純作業をする際には、整理整頓されたスペースで集中して取り組むことで成果が得られますが、創造的な作業には少し散らかったデスクの方が効果的であると言えます。自分がどちらの仕事をしているのかによって、環境を使い分けることも有効かもしれませんね。