加熱していた“AI株”が一気に鈍化した

その代表例はマイクロソフトの決算だ。同社は“チャットGPT”を開発したオープンAIなどと連携し、AIのモデル開発や専用チップのデザイン、AIのトレーニングを行うデータセンターの建設など設備投資を積み増した。

AI利用者の急増から、主要投資家は設備投資が短期間の収益の増加に寄与すると期待したが、実際の4~6月期、マイクロソフトの業績拡大を牽引したクラウド(アジュール)部門の売上高は前年同期比29%増、前期の同31%増から鈍化した。

AIによる寄与も小さくなった。グーグルなどの決算からも同じ傾向は示唆された。AI関連の設備投資は増えたが、実際の収益獲得に時間がかかるという慎重な見方は増えた。それは、株価の調整圧力を高めた。

7月末、わが国では予想外に日銀が利上げを実施した。内外の金利差縮小観測で円は買い戻された。円高は国内輸出企業の業績にマイナスで、日本株は売られた。米国の景気先行き不安も高まった。8月2日に発表された7月の失業率は予想を上回った。

思った以上に労働市場は鈍化し、個人消費も下振れるのではないかと身構える投資家は増え、株式などのリスク削減が進んだ。5日、ドル/円の為替レートは1ドル=141円台まで反発し(ドル安・円高)、日経平均株価は前日比12.40%安の3万1458円42銭に下落した。

インテルは「1万5000人のリストラ」を発表

インテルの決算内容も、投資家の先行き不安を高める要因になった。2024年4~6月期、同社の業績はかなり厳しかった。売上高は前年同期比1%減の128億3300万ドル(1ドル=146円換算で1兆8736円)、最終損益は16億1000万ドル(約2350億円)の赤字だった。

7~9月期(第3四半期)の売り上げ見通しは市場予想を下回った。配当の支払いも停止する。同社は従業員の15%に当たる1万5000人のリストラも発表し、2025年に100億ドル(1兆4600億円)のコストを削減する計画だ。

同社の主力事業は総倒れの状態にある。PC向けの中央演算装置(CPU)などクライアント・コンピューティング・グループ(CCG)、データセンターと人工知能(DCAI)、ネットワーク・エッジ(NEX)の業績は悪化した。過去5四半期、インテルのファウンドリー事業の営業損益も赤字だ。