ゴンドラで登って極上のかき氷を

姫路城の石垣には、自然石を加工せずに積んだ野面積も随所に見られるが、それらの多くは羽柴時代に積まれた。つまり、輝政は羽柴時代の、積み方が未熟な石垣を基礎に縄張りし、整備したのである。

歩くとわかるが、地形に合わせて積まれた未熟な石垣を活かしているため、曲輪や通路が入り組んで配置され、結果的に攻撃しにくい構造になった。また、入り組んだ石垣上に配置された建造物の多くは左右が非対称で、それらが複雑に折り重なり、独特の美しさが生じた。そのことを意識しながら鑑賞すると、味わいも深くなる。

第2位は松山城(愛媛県松山市)。7月12日に土砂崩れが発生し、1カ月程度は入城できないといわれたが、安全が確認できて、7月31日に20日ぶりに営業が再開された。標高132メートルの山頂に本丸があるが、ゴンドラかリフトで登れるので、猛暑でも登城するのに苦はない。

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そこには重要文化財21棟のほか、主として伝統工法による木造で復元された建造物群を加えると51棟が建ち並び、江戸時代に近い景観が広がる。風通しがいい本丸、および現存する3重の天守の最上階からは、瀬戸内海の景色も眺められる。

また、本丸内の売店と食堂を兼ねた「城山荘」は、食事にせよ甘味にせよ、城郭内としては破格の味わい。個人的には、ここで食べられる「伊予柑かき氷」を超えるかき氷は、日本中探してもないと信じている。

筆者撮影
「城山荘」で食べられる「伊予柑かき氷」

松山城には、近くの道後温泉に浸かるという御褒美もある。とくに明治時代に建てられた道後温泉本館は、大規模な保存修理工事が7月に終わって営業が再開されたばかりで、タイミングがいい。

第1位は日本最古の国宝の城

松本城(長野県松本市)も、「松本の奥座敷」といわれる浅間温泉が控えており、城めぐりと一緒に温泉を楽しめる立地にある。また、周囲には安曇野や蓼科といった避暑地も多く、夏に訪れるにはうってつけといえる。そこで第1位としたい。

写真=iStock.com/tupungato
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現存する12の天守のうち5重のものは、この松本城と姫路城だけで、白亜の姫路城と対照的な漆黒の容姿には、独特のシックな美しさがある。また「漆黒」とは単なるたとえではなく、外壁の下見板には実際、黒漆が塗られている。

松本城天守はとくに南西から内堀越しに望むと、大天守が左に渡櫓と乾小天守を、右に辰巳櫓と月見櫓を従え、絶妙に均整がとれたシルエットが美しい。それは翼を広げた鳥のようで、松本城から遠望できる北アルプスや美ヶ原の稜線を思わせる。

平城なので、酷暑のなか山や丘を登ることなく鑑賞できるのも、この夏向きである。避暑を兼ねて国宝の天守を鑑賞できるとは、ぜいたくではないだろうか。

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