ワガママ老人が元気で長生きする

日本の高齢者は節制や我慢を美徳と考えている人が多く、自分の欲や娯楽を過度に制限してしまう傾向があります。

若い頃はそれがプラスに働く場合もあるかもしれませんが、年を取ったら、それまで囚われてきた世間体だの体面だの、社会的な常識だのから自由になってもいいはずです。

多少わがままであっても、そんな自分を受け入れて、思いっきり人生を楽しむ。それが何より健康長寿の秘訣です。

食事も健康のためにコントロールしようなどと考えずにおいしいものを食べて、日々を過ごす。高血圧と糖尿病を抱えながら運良く高齢になるまで生き延びたのであれば、無理に血圧を下げたり血糖値を下げたりする必要もありません。

中高年の間は、年を取ってから動脈硬化や心臓病にならないために甘いものを控えたり塩辛いものを我慢すべきかもしれませんが、年を取ってしまってからは、自分の好きな味で食べればいい。

そこまで生きぬいたご褒美として、食べものにいろいろ制約がつけられる中年族を尻目に、堂々とご馳走を食べたらいいのです。

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高齢者といわれる年回りになったら、死ぬまでの日々を自分の好きなように生きて、満足してこの世を去ることを考える。

実現するにはさまざまな壁があるにしても、そうした年寄りが増えれば、若い世代にとっても「どうにか若い時代を乗り切れば、後は幸せな年寄りとして人生を送り、自分らしい最期を迎えられる」という励みになると思うのです。

高齢者はタバコを無理してやめなくてもいい

先に述べた養老先生の例もあるように、高齢になったらタバコも無理してやめる必要はないと思います。

タバコを吸う人は、吸わない人にくらべると、確かに動脈硬化になりやすく、心筋梗塞や脳卒中になるリスクが高くなります。酸素と二酸化炭素を交換する肺胞が破壊されてしまう肺気腫になる可能性も高い。

基本的に私は、中高年までの人には、できるだけ早く禁煙したほうがいいとすすめています。しかし、タバコを吸っていても70代まで生きてこられた人は、いまさら無理してやめる必要はないと思います。

かつて浴風会の老人ホームで、喫煙者と非喫煙者の生存曲線を調べたら、65歳を超えると生存率はほぼ変わらないことがわかりました。

なぜこんな結果になるかと言えば、喫煙によってがんや心筋梗塞になる人は高齢になる前に亡くなっている可能性が高いからです。

ホームに入った時点で、何十年もタバコを吸っているのに、肺がんにも心筋梗塞にもなっていない人は、タバコに強い何らかの因子を持っているのかもしれません。

いずれにしても、タバコを吸い続けて70代、80代まで生き延びたような人は、いまさら禁煙しようがしまいが、寿命は変わらないというわけです。そう考えると、70歳を過ぎた高齢者に無理やり禁煙させる必要はないでしょう。