喫煙所に目をつけた自販機会社の狙い
――無料喫煙所「paspa」を始めたきっかけを教えてください。
2019年、代々木駅前に喫煙所を設置したのが始まりです。現在は千代田区、中央区、港区、台東区など都内約50カ所を運営しています。口コミで広がり、月間利用者は延べ100万人に達しています。1日平均で延べ4万~5万人の方々にご利用をいただいております。
きっかけは、旧知の不動産会社が所有していた10坪の土地を借りたことです。その土地は、狭い道路に接し、活用が難しいため更地のままになっていました。
私たちの会社は「いろんなスキマから世の中を面白くする!」をミッションに、これまで価値のないと見なされてきた小さな土地に、自動販売機や、ショーケース型の広告を設置する事業をしてきました。
その土地にも自販機を置く予定だったのです。ところが近所を廻って見たところ、50メートルほど先にあるタバコ店の店先に、灰皿目当ての喫煙者が大勢集まっているのに出くわしました。人が歩道からはみ出るほど集まっていて、モクモクと煙が上がっていたのです。
その時「この人たちに自販機を使ってもらおう」と閃きました。そうして、喫煙所と自販機をセットで設置したんです。
自販機と喫煙所は相性がいい
私たちの会社は2005年、自販機の設置・運営からスタートしています。その中で、自販機と喫煙所はとても相性がいいと感じていました。
無料喫煙所を始める前のことです。売上のいい自社の自販機トップ50を調べてみると、人通りがそれほど多くない米穀店の自販機が上位にランクインしていました。
理由は現地に行くとすぐにわかりました。店先に灰皿があり、タバコを吸うお客さんが集まり、自販機で飲料を買ってつかの間の休息をしていたんです。これ以来、喫煙所を自社展開するアイデアを持っていました。
まず、タバコ店を訪問して、喫煙所を設置しようと思っていると店主にお話しました。店主の反応は意外なものでした。「これで私はやっと休める」と驚くほど感謝されたんです。
聞けば、昼夜を問わず、ひっきりなしに喫煙者がやってくるため灰皿の掃除が欠かせず、1年365日、店を閉められない状況だったそうです。近隣の方からのクレームも相当あったと伺っています。