トレーラー型の喫煙所を導入

店主は「喫煙所ができるのだったら、ウチは灰皿を置くのをやめる」とおっしゃいました。灰皿を撤去すると同時に、私たちの喫煙所を案内する掲示物を作ってくれました。こちらも、タバコ店の案内を掲示してウィンウィンの関係を築くことができました。

そこは、灰皿と自販機を各2台ずつ置き、雨よけとして屋根を設置した簡易的な喫煙所でした。

――自販機の売上はどうでしたか。

1日1500人くらいの人が利用し、自販機の売り上げは月70万円ほどになりました。平均的な売上は、メーカーのもので月5万~6万円。自社の自販機では十数万円がいいほうです。喫煙所と自販機を組み合わせることで、とてつもない売上をたたき出したのです。

ただし、「煙が臭い」というクレームもありました。会社ではなく渋谷区役所に寄せられました。ところが区役所も喫煙所の撤去は求めませんでした。喫煙所がなくなると路上喫煙が増えて困るというのです。そこで、区と一緒に、現在も設置している強力な空気清浄機を備えたトレーラーハウス型の喫煙所を作り、設置しました。以来、空気が外に漏れることがなくなり、周辺の方々にも喜んでいただいています。

トレーラー型の喫煙スペース。写真は日本橋のもの
撮影=プレジデントオンライン編集部
トレーラー型の喫煙スペース
トレーラー型喫煙所
撮影=プレジデントオンライン編集部
トレーラーの内部

どうやって賃料を賄っているのか

――paspaは駅前や人通りの多い路面店にもあります。賃料は自販機の収入で賄えるのでしょうか。

自販機の収入はありますが、利用者の皆さんが毎回飲料を購入してくれるわけではありません。自販機収入だけで都内50カ所の喫煙所を無料で運営することはできないのが現状です。ですので、賃料は行政からの助成金で賄っています。

2020年春、内神田に3カ所目となる喫煙所を設置する時です。築60年超の木造建物で改修には多額の費用が必要となるため頭を抱えていました。その際に、千代田区の「公衆喫煙所助成制度」の存在を知り、活用することにしたのです。

千代田区の制度は、無料で喫煙所を運営することなどを条件に、新規の設置経費(内装改修工事費)に上限700万円、維持管理経費(賃料や光熱費、空気清浄機の保守費など)に年額上限264万円などがほぼ全額助成されます。

空気清浄機は1台数百万円するため、設置すると多額の費用がかかります。清掃、保守点検だけで月8万円以上になります。さらに賃料1カ所で月20万円ほどかかるため、助成制度のおかげでようやく収支がトントンになっています。