「10件中8件は断られます」

助成金があるとはいえ、他の会社が事業を続けるのは簡単ではないと思います。

私たちには自販機という収益源があります。1日2回程度の清掃費も大きな負担になりますが、私たちは自社のスタッフが自販機に飲料を補充する際に灰皿交換などの清掃業務を行うことで経費を抑えることができるのです。

喫煙所の中
撮影=プレジデントオンライン編集部
喫煙所には自社の自販機が設置されている。重要な収入源だ

――1年で10カ所のペースで喫煙所を増やしていますね。

助成金を活用したことが非常に大きいのですが、2020年4月に、東京都では受動喫煙防止条例が施行され、屋内飲食店での喫煙が原則禁止となったことも追い風になりました。

喫煙できる場所が減ったことで路上喫煙が増え問題になっていました。行政は自分たちで運営するのは難しい、だから民間に委託したい……。当初は飲食店の一部に喫煙スペースを設けるための制度で、物件を借りて喫煙所を運営するという想定はしていなかったようです。

さらに追い風となったのは、新型コロナの感染拡大です。同月に発出された1回目の緊急事態宣言の頃から飲食店の撤退が相次ぎ、不動産オーナーから空きスペースを何とかしたい、と相談を受ける機会が増えました。

しかし実際は、思うように増やせませんでした。喫煙所にネガティブな印象を持つ人は少なくなく、断られることが多いんです。候補地が10件あればうち8件は断られます。

最終段階で白紙にしたケースも

――断られたのはどのような理由でしょうか。

不動産オーナーからOKをもらっても、町内会や近隣住民の方々から賛同をいただけず、断念したケースが多いんです。見知らぬ人が集まることへの不安、タバコの煙の臭いに懸念される方が多かったです。

私たちの喫煙所は1台数百万円の強力な空気清浄機(高性能集塵脱臭機)を導入しており、粒子や臭いを取り除いたうえで排気しています。喫煙所には、千代田区の助成制度では「喫煙所の室外から室内への風速を0.2メートル毎秒以上確保すること」が要件の一つとして課されており、タバコの煙が漏れ出る心配はありません。

実際に見に行ってもらえばご理解いただけるのですが、当初はなかなか理解を得られませんでした。喫煙所の必要性は理解しても、近所でやって欲しくないと考える方が多いのです。

芳屋社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
厳しい基準をクリアしても、近隣住民の賛成が得られず、設置を見送ったケースも多い