相続税だけでなく贈与税も逃れた
贈与税というのは、相続税の抜け穴を防ぐためにつくられた税金です。自分の資産を生前に家族などに贈与してしまえば、相続税は課せられなくなります。それを防ぐために、生前に贈与した場合も税金が課されるということになっているのです。
しかし、武富士一族は海外で資産譲渡を行うことにより、この贈与税を逃れたのです。
つまり、武富士一族が贈与税を逃れるスキームは、「海外の資産を海外に居住している者に譲渡すれば、贈与税はかからない」だから「資産を海外に移し、親族を海外に居住させ、海外で譲渡を行う」ということです。
2600億円以上贈与し、贈与税1300億円以上を「無税」に
創業者氏から長男へ贈与された株式の時価は、推定2600億円以上でした。
2600億円を普通に贈与していたならば、贈与税として1300億円以上を払わなければなりません。それを無税で乗り切ったのです。
国税当局は、それでは腹の虫がおさまりません。実質的に日本の企業である武富士の株を自分の息子に譲渡しているのに、贈与税をかけることができないのです。
だから、国税当局は、「長男は香港に住民票を移しているが、実際は日本で生活しており香港に住民票を移したのは課税逃れのために過ぎない。実際は日本に住んでいたのだから、日本の贈与税はかかる」として追徴課税を課しました。