「隕石の衝突」は珍しいことではない

さて、これまで触れてきていなかった宇宙への眼差しに、隕石衝突への備えというものがあります。

映画や小説などでもなじみがあるかと思いますが、地球に隕石が落ちてくるという、いわば空想の世界に留めておきたい類のものです。しかし実際には、太陽系では隕石の衝突はよく起こっており、一般には「天体衝突」と言われます。

地球や月にはクレーターがありますが、クレーターができた原因のひとつは隕石の衝突だと言われています。天体と天体がぶつかることは頻繁に起こっているのです。現に、恐竜を絶滅に陥れたのも直径10キロメートルを超える大きな隕石の衝突であったという説が有力とされています。

彗星や小惑星など、地球に近づいてくる軌道をもつ天体を総称して「地球近傍きんぼう天体(NEO:Near-Earth Object)」と呼んでいます。それらを常に観測しておくことが、隕石衝突を予知することに繫がります。

しかし、もし恐竜を絶滅させるくらいの環境の変化をもたらす隕石が地球に来るとわかったら……事前に、迫ってくる隕石をはねのけたり、何かしらの工夫をして危険を回避できないかという議論に繫がります。

「宇宙機でわざと小惑星にぶつかってみよう」

NASAは、隕石の軌道を何らかの衝撃で変えるというアイデアを実際に実験しました。「二重小惑星進路変更実験(DART:Double Asteroid Redirection Test)」という難しそうな名前ですが、コアになるアイデアはシンプルです。

小惑星とそのまわりを回るもうひとつの小惑星をターゲットとし、宇宙機がそれらに近づき、まわりを回っているほうの小惑星に意図的にぶつかることで、その衝撃によってどのように軌道が変わるかを観察するというものです。

小惑星の名前はディディモス(Didymos)。まわりを回るほうはディモルフォス(Dimorphos)という名前ですが、初期にはディディムーンとニックネームがついていたように、地球とそれを回る月のような星があったと考えると、覚えやすいかもしれません。

2022年9月、実験の様子はインターネット上でライブ配信されました。ディモルフォスにどんどん近づく宇宙機から刻々とディモルフォスの表面の映像が届きました。

写真=iStock.com/LaserLens
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