LINEを使った「当選おめでとう」詐欺

国際ワン切り詐欺と他の詐欺を組み合わせたパターンもあります。2021年1月に起きたファストフードのキャンペーンを騙る事件です(図表4)。

このときはLINEの友人からキャンペーンメッセージが転送されてきて、クリックすると偽サイトへジャンプ。偽サイトでは「当選おめでとう」と表示され、景品を受け取るには以下に電話をかけてくださいと表示され、携帯電話会社のアイコンが並んでいました。

携帯電話会社ごとにかける相手の国は異なっており、筆者が実験したNTTドコモではチュニジアでした。取材のために電話をかけてみたところ、前述の日本語自動音声によるクイズが流れてきました。チュニジアあての通話料金は30秒あたり199円ですからかなり高額です。クイズにまともに答えると2000円以上になると思われます。

この手口ではLINEを利用したものでしたが、WhatsApp(ワッツアップ)を使ったまったく同じしかけも見つかっています。

WhatsAppは英語圏で一般的なメッセンジャーアプリです。犯行グループは、日本だけではなく英語圏の国も狙う国際的なグループと考えていいでしょう。

折り返さない・無視するのが鉄則

国際ワン切り詐欺は繰り返し起きており、携帯電話会社はそのたびに注意喚起を出しています。携帯電話会社側で対策をしてほしいものですが、国際電話自体を止めることはできず、また詐欺かどうかも判断が難しいため、シャットアウトは困難でしょう。

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この国際ワン切り詐欺は、日本での摘発例はありません。国際捜査が必要ですが、被害額があまり大きくないためか海外でも摘発された例はあまりないようです。そのため今後も同様の被害が出る可能性があります。

対策は単純で、ワン切りには一切折り返さないこと。友人がいる国であっても掛けてきた番号に折り返してはいけません。

合わせて知識のない人向けには、国際電話への発信を停止する方法があります。各携帯電話会社で設定できるもので、国際電話をかけることができないようにすることが可能です。

高齢の両親や祖父母の被害を防ぐために、国際電話を停止したほうが無難かもしれません。

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