掛け直すと「クイズ」が始まることも

国際ワン切り詐欺の概要をまとめたのが図表2です。海外からの着信はワン切り(呼び出し音が1回のみで切れる)、もしくは呼び出し音が鳴らずに着信履歴だけが残る、極端に短いものが主流です。

もし間違って折り返した場合、多くの場合は自動音声のメッセージが流れます。英語など他の言語のこともありますが、最近は日本語の音声もあります。前述した2019年9月の台風上陸での着信もそうでしたし、2021年1月の事件では自動音声で日本語のクイズが流れました。

クイズは女性の日本語自動音声で「五つのクイズに答えてください。まずは最初のクイズです。ロナウドはどこの国の選手でしょうか? 1:ブラジル 2:ポルトガル」というものでした。クイズのたびに回答時間としてBGMが流れて30秒ほど待つ必要があります。通話時間を長引かせるためのしかけでしょう。

発信元の国はアフリカやオセアニアなどの小さな国が多くなっています。ガイアナ、中央アフリカ、ギニア、モーリタニア、パプアニューギニアなどからの発信です。日本とはあまり関わりのない国が多く、過去に植民地だったところが多い印象です。

ちなみに間違って折り返すと、その後に何度もワン切り着信が続くことがあります。着信があった電話番号をリスト化して、その番号を狙っていると思われます。

接続料のキックバックを狙っている

犯行グループの目的は、国際電話料金の一部である「接続料」のキックバックを狙ったものだと推測しています。筆者がインタビューした国際電話契約に詳しい関係者によれば「現地の国際電話会社が料金の一部を契約者(この場合は犯行グループ)にキックバックするしくみが存在している」とのこと。

お金の流れをまとめたのが図表3です。

私たちがスマホなどで海外に電話をかけた場合、日本の携帯電話会社に国際電話料金を支払います。携帯電話会社は、その料金の一部を「接続料」として現地の国際電話会社に支払っています。つまり、電話を受ける現地の国際電話会社側にも料金が入っているのです。

ポイントはこの現地の国際電話会社です。国際電話会社が接続料の一部を契約者(犯行グループ)にキックバックするしくみがあると思われます。前述の関係者によれば「料金の一部をキックバックする契約があり、それを仲介する国際ブローカーが存在している。犯行グループはその契約でお金を稼いでいる」と答えています。これは「着信インセンティブ契約」と呼ばれるもので、一部の国の国際電話会社にあると思われる契約です。

この話が本当だという保証はありませんが、国際ワン切り詐欺の多くが折り返し通話を引き伸ばそうとしていることから、その通りだと考えていいでしょう。

犯行グループが稼げるお金は、国際電話料金の一部の接続料のさらに一部のキックバックであり、ごくわずかな金額です。しかし自動音声と自動発信の単純なしかけですから、自動化は簡単にできるでしょう。自動システムでチャリンチャリンと小銭を稼ぐしくみだと考えられます。