「家事より勉強」と育てられた世代

一連のドラマには、プロデュースはもちろん、脚本家や原作者にも女性が参加し、それなりに女性の気持ちが投影されているとみてよいだろう。もちろんスタッフの性別だけで作品を判断はできないが、圧倒的な男性社会で男性都合の物語が作られてきたテレビの世界で、女性が関わることは重要である。

これは私の肌感覚だが、平成以降に社会へ出た女性は、母親からの期待を背負って勉学にいそしんで育ち、仕事のやる気は高いが家事に消極的な傾向が目立つ。女性の自立意識の高まりと男性の所得の伸び悩みも重なって、現在アラフォーのミレニアル世代以降は、出産後も仕事を続ける人が増えた。しかし、保護者に「家事より勉強」と育てられ、子ども時代に家事を身につける機会が少なかった人も多く、ドラマのヒロインほどかどうかはともかく、大人になって生活を回すうえで困難に直面した可能性は高い。

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男性の家事時間は短く、女性の負担が重い現実

一方、ミレニアル世代以降の男性は家庭科共修世代でもあり、「家事=女性の役割」という先入観が弱い傾向がある。これも肌感覚だが、家事や育児に積極的な人は多いが、社会のシステムや上の世代の感覚が男性を長時間労働に追い込みがちなため、あまり家事に時間を割けない人も多いらしく、男性の家事時間は相変わらず短い。

理想と現実のギャップが大きく女性の負担が重い実状が、家事の省力化を求めるムーブメントの原動力になってはいる。そうした女性の願望を投影したのが、一連の家事ドラマというわけだ。とはいえ、家事能力がほぼゼロの女性像を見ると歯がゆくなる。

テレビドラマは、同時代の憧れや共有されているイメージを投影する。例えば均等法第一世代が20代だった1990年前後の連ドラでは、ヒロインは仕事こそしているが、元気だけが取り柄でドジな「保護したくなる」キャラクターが目立った。家事はできる前提。もう少し前の1980年代の少女マンガでは、10代のヒロインも料理の腕で男性の心をつかんだ。そういった良妻賢母像を求められたくない、女性だからと家事能力の高さとマメさを求められるのは違うし不快だ、という気持ちもわかる。