ブラジルの異常な高温が「不作」を招いた

「私達は衝撃を受けています。(減産は)気候の影響が大きいです」

FundecitrusのGMジュリアノ・アイレス氏は生産者に向けた発表会でこのように述べた。

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オレンジは、サンパウロ州では大豆、サトウキビに次ぐ第3の規模の農産物だ
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敷地面積の広い農場で生産されるオレンジ

過去30年間の年間生産量について、10年間ずつの平均で比べた場合にも、

1994/1995~2004/05年度:約3億5100万箱
2004/05~2013/14年度:約3億3700万箱
2014/15~2023/24年度:約3億800万箱

と下降線をたどっており、ブラジル一大生産地における長期的な減産が明らかだ。

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今年の収穫予測発表会の壇上でアントニオ・ジュリアノ・アイレスGM

アイレス氏の語る通り、昨年から今年にかけての著しい不作の主な原因は、オレンジ栽培に不都合な気候条件だ。

「著しい乾燥と高温がオレンジ生産に打撃を与えました。昨年6月以降長らく続いたエルニーニョ現象により気温が高止まりしたことが、過剰な蒸発散と土壌の湿度減少を促しました」

Fundecitrus研究・収穫予測コーディネーターのヴィニシウス・トロンビン氏は同じ発表会の壇上でこう説明した。

昨年9月、11月、12月と地域を3度襲った熱波により、実の成ったばかりのオレンジが落果したため、果樹一本あたりの収穫量が減ったのだ。オレンジ栽培においては、気温が35度を超えると樹木のホルモンバランスが崩れやすくなり、エチレンが増えることで葉や実を落としてしまうという。昨年は柑橘類ベルトでも38度を超える日が続いたことが、収穫の大幅な減少を招いた。

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高温が影響して実を落としたオレンジの樹

収穫量が減少したことで、国内市場でのオレンジ価格は高騰している。生果のオレンジとして人気の品種「ラランジャ・ペラ」は今年2月時点で、価格が過去1年間と比べて36%も上昇した。オレンジ大国ブラジルの一般消費者にとっても、馴染みのフルーツが求めにくくなっているのだ。

気候変動とともに生産者を悩ます「病気」

気候変動とともに世界のオレンジ栽培を悩ませているのが、カンキツグリーニング病だ。

カンキツグリーニング病は、病原体を持つ体長3ミリほどのミカンキジラミ(Diaphorina citri)がオレンジの木の樹液を吸うことで発症する。感染したオレンジの木の葉には黄色い斑が生じ、果実は成熟しても小さく、表面に緑色の斑が残り、味が苦くなる。若い木が感染すると実をつけない場合もある。