食生活の欧米化に伴い中国で需要拡大
「輸出量が減ってもヨーロッパが最大の輸出相手地域であることに変わりはありません。減産のためにブラジルではストックが減っています。こうした危機的状況にあって大口の契約相手の需要を優先するのは当然のことです。アメリカは気候やグリーニングの問題でオレンジ生産が縮小していたなかで、2022年9月の収穫直前のハリケーンが壊滅的な打撃をもたらしました。2022/2023年度からアメリカへの輸出が大幅に増加したのはそのためです。アメリカのオレンジ市場は他の国や地域と異なり、ミニッツメイド、シンプリー・オレンジ、トロピカーナなど有力な大手ブランドが取引相手であることもあって高値で取引されているのです」(ネット氏)
世界第2位の人口を持つ中国での消費拡大も影響している。
「中国では中産階級の拡大に伴う食生活の欧米化により、濃縮還元オレンジジュースの需要が伸びています。日本は輸出の数量において安定して4~5%ほどを占める第3の輸出相手国でしたが、4年ほど前から中国が日本を上回りました」
5年前と比較すると、対中輸出の数量は86.6%増、利益は130%増となっている。欧米に比べると規模は小さいが、急成長しているマーケットなのだ。
こうした欧米や中国相手の「買い負け」も日本のオレンジジュースの供給が滞っている遠因となっている。
海外からの輸入に依存する日本
日本と欧米・中国との違いはほかにもある。
「ブラジルにとって主要な濃縮還元オレンジジュース輸出先であるヨーロッパ、アメリカ、中国はいずれも国内でもオレンジを栽培しています。もっとも、ヨーロッパと中国では、生産されるオレンジのほとんどが、見た目も重視される青果として消費されています。ブラジルはこれらの地域のオレンジ消費に対して、ジュースで補っていると言えるでしょう。オレンジがほとんど栽培されていない日本だけは主要輸出相手国のなかで例外なのです」(ネット氏)
日本は、国産の温州みかんをオレンジとして数えても、オレンジジュースの94%を輸入に依存している。また日本が輸入するオレンジジュースの72%をブラジル産が占める。
ブラジルの過去4年の濃縮還元オレンジジュースの対日輸出を見ると、数量は2020/2021年度の3万8518トンから減り続け、最新の2023/2024年度では2万7668トンとCitrusBRが公開している過去19年のデータで最低となった。
なお過去4年のブラジルの収益は逆に約5456万ドルから約8620万ドルへと上がっている。これではメーカーによるオレンジジュース商品の値上げや販売中止の判断もやむを得ない。