「雑誌中心」から「書籍中心」のビジネスモデルへ

この表を丁寧に見てゆきましょう。雑誌(コミック含む)の売り上げはピークに比べて30.7%(1万5633億円⇒4795億円)まで下がり、書籍の売り上げはピーク時に比べて59.4%(1万931億円⇒6497億円)になっています。令和になって雑誌の衰退が顕著になって、書店の売り上げが採算分岐点を下回り、書店は店舗を閉店するしかない状態に追い詰められています。

別表2をご覧ください。主要書店法人の営業実績です。どの大手法人も営業利益率が極めて低いか赤字です。街の書店だけでなく、大手書店も経営的に厳しい状況にある事がわかります。

出所=『2028年 街から書店が消える日 本屋再生!識者30人からのメッセージ』

山積する課題を、何から片付けていくべきか。なによりも出版界の「昭和のビジネスモデル」から転換することです。雑誌とコミックは書店だけでなく取次も雑誌流通が起点です。雑誌主体だった昭和のビジネスモデルから、書籍を中心としたモデルへ転換しなければ、書店も取次も赤字体質から抜け出せません。

商材としての雑誌に期待できない以上、日本社会が守るべきは、書籍の売り上げを軸とした街の書店の構築ですが、残念ながら新たなビジネスモデルの構築は遅々としています。

謎ルール「雑誌発売日協定」は撤廃せよ

一例として、出版界の「昭和ビジネスモデル」の典型である出版界のカルテル「雑誌発売日協定」について説明します。どんな業界でも出来上がった商品は一日も早く消費者に届けるようにしますが、出版界はコストと手間をかけて「雑誌発売日の同一地区同一発売日」を死守しています。

わかりやすくお伝えします。九州地区は同一発売日地区なので、福岡市中央区天神の書店と鹿児島県の山中にあるコンビニエンスストアの発売日を同じにするために雑誌発売日を遅いほうに合わせて雑誌を出荷しています。出版界が消費者利益よりも業界内都合を優先する「雑誌発売日協定」を守り続ける出版界に物流のイノベーションは起きません。

このカルテルがなければ、取次の赤字部門であるコンビニ雑誌の個別配送を廃止して雑貨との混載も可能になって大幅なコスト削減とCo2削減にも寄与できますが、その声は出版界から上がっていません。(詳細は『2028年 街から書店が消える日 本屋再生!識者30人からのメッセージ』(プレジデント社)のp176参照)