中国と太いパイプを持つ人物が必要だ

日本と中国がどのような関係を築くにしろ、欠かせないのは人脈である。しかし、残念ながら、現在の日本には、中国に太いパイプを持つ人がいなくなってしまった。

外務省では、親中の「チャイナスクール」がかつては一大勢力だった。しかし、民主党政権のときに実業家の丹羽宇一郎氏を中国大使に起用してから、パワーバランスが崩れて省内での力を失った。

日本の政治家や官僚、ビジネスパーソンに中国と人脈を築きたいという思惑があっても、現在の習体制の下では厳しい。以前は地方政治で経験を積んで中央政府へと続く出世ルートがあった。

共産党の中枢にパイプが欲しい日本人は、これから出世すると見込んだ地方政府の有力な書記や省長、市長と親交を深めた。しかし、このルートも習体制になってから機能しなくなり、目立つ人物はむしろ粛清の対象になっている。

中国と意思疎通したければ、トップの習近平国家主席と直接話すしかないが、それをできる日本人がかつては3人いた。

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習近平と意思疎通ができた3人の人物

1人は田中真紀子氏である。父親の田中角栄が日中国交正常化を果たした恩人だからだ。ただし、彼女はもう政界を引退している。

2人目は、創価学会の池田大作名誉会長である。彼は中国で布教するために相当な額の寄付をした。また、公明党は憲法9条改正反対のスタンスなので、中国にとって都合のいい「日本の再軍備反対」とも符合している。ただし、池田氏も2023年11月にこの世を去った。

3人目は自民党の二階俊博氏だ。彼は旧田中派の中国人脈を引き継ぎ、経営者を2000人ほど連れて訪中するからである。しかし、朝貢外交に近いビジネスライクな関係であり、政治家として評価されているわけではない。

このようにかつてのパイプも細っているので、やはり日本として、中国との新たなパイプをつくる必要があるだろう。

中国と巧みに外交をできる政治家が育たないのは、中国への理解や関心が希薄だからだ。普段仲良くない、どちらかというと嫌いな奴が困ったときだけ近寄ってきても、鬱陶しいだけだろう。

日中関係は健全な状態に保っていきたい。対中問題で机上の空論を語るのではなく、まずは最低限、中国に関心を持って知ろうとする姿勢を日本の政治家には持ってもらいたいものだ。中国をアメリカのレンズを通して見るのではなく、2000年来の友人として見ることのできる人材の育成が、今一番求められているのではないだろうか。