有休を取ると給料が50%上乗せされる

また、日本人にとっては少し驚きかもしれませんが、フィンランドでは有休を取ると休暇手当も支給されます。これは法律ではありませんが、多くの企業で有休を取ると、1日の賃金の50%に当たる休暇手当を支給しています。社員は有休を取れば給料が普段より増えるため、有休取得率は100%近くとなっています。こうした積極的な休暇取得政策により、多くの人たちは夏に長い休暇が取れ、充実した幸せな時間を過ごせています。

近藤浩一『北欧、幸福の安全保障』(水曜社)

実はこうした休暇と幸福の関係について、2009年のスティグリッツ委員会の報告書ではすでに示されています。スティグリッツ委員会とは、2008年にフランスのサルコジ大統領が招集し、ノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ教授を中心にGDPに代わる幸福への新しい指標を提案するため組織されたものです。

最近よくSDGsという言葉を耳にしますが、国連の持続可能な開発目標であるSDGsは、この報告書の提案に大きな影響を受けて作成されました。そして、この委員会の報告書では、幸福には余暇も大きく影響しているため、幸福度を示す指標として「余暇の量」を含める必要が示されています。このことからも、フィンランドの長い休暇は、同国の幸福度の高さにも大きく影響しているといえます。

余暇の量と社会利益のバランスには課題もある

一方で、夏の長い休暇は良い面ばかりでもありません。夏になると官公庁の職員も休暇を取るため、執務時間が短くなり休館するところも多くなります。また、病院も普段と比べて稼働しなくなってしまいます。そのため、余暇の量と社会利益のバランスは今後の課題にもなっています。

それでも、フィンランド人にとって自由な時間の確保はとても重要です。こうした背景からも、法律で厳格に有給休暇の権利を保障し、企業も休暇取得を積極的に勧めています。そのため、有休取得率は100%近くと非常に高い値となっています。

このような官民の積極的な休暇取得サポートから、人々は家族や友人と過ごす時間や、趣味などに費やす余暇の時間が確保でき、ストレスの軽減、心身の健康維持、家族とのつながりが強まります。これが、社会全体として高い幸福度の生まれる一因にもなっています。

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