なぜ北欧の国々は「幸福度」が高いのか。スウェーデン在住の近藤浩一さんは「スウェーデン人は、自分が少しの不便を我慢すればその分他人の時間を生むという考えを持っている。そのため、宅配物も自分で受け取りに行き、過度なサービスも要求しない」という――。

※本稿は、近藤浩一『北欧、幸福の安全保障』(水曜社)の一部を再編集したものです。

イケアの紙袋
写真=iStock.com/brittak
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「組み立て式」のイケアの家具はなぜ支持されるのか

スウェーデンの家では、シンプルで機能的な家具が目立ちます。ただ、スウェーデンに限らず、ヨーロッパ各地でも同様な家具をよく見かけます。そうした家具を持つ人にどこの家具か尋ねると、決まって「イケアの家具です」と返答されます。

イケアとは、1943年にスウェーデンの田舎町エルムフルトでイングヴァル・カンプラード氏によって設立された家具店のことです。「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョンのもとイケアは創業されました。2024年において、イケアは、世界31カ国に482店舗、日本にも13店舗を展開しており、世界最大の家具量販店となっています。今もその原点である、カンプラード氏の意志が受け継がれており、たくさんの良質な商品が提供されています。

一方で、多くの商品では組み立てが必要で手間がかかります。ですが、スウェーデンではこの手間も気にされず、イケア家具は高い人気を誇っています。

中には家を自作する人もいる

ただ、スウェーデンでは家具の組み立てだけでなく、家庭内のDIYプロジェクトに情熱を傾ける人も多くいます。たとえば、壁の塗り替えや床の張り替え、電気配線工事など、日常の修繕や改装作業も、自分たちの手で行うのが一般的です。そして、こうした作業は忙しい毎日のなかの、リフレッシュとしても楽しまれています。

こうした手間をかけた作業は、家具や内装だけではありません。なかにはなんと、一から家を建てる人もいて、家の土台づくりから外装、内装、そしてサウナやプールまで、あらゆる工程を自ら手がけ、理想の住まいを実現しています。

最近では、自宅建設のための「キット」も販売されていて、2階建ての家で、100万クローナ(約1450万円)ほどから購入できます。自分で家を建てる人の多くは、仕事後や休日に家づくりに励んでいます。そして、何年にもわたるプロジェクトを通じて、自分の手で夢の住まいを実現させ、自作した家での生活に喜びを感じています。

フィンランドでも自分で家を建てる人は多く、自分で家を建てたことに誇りを感じ、その家での生活に満足感を得ています。