日本型の働き方はスウェーデン人にはストレス

国連世界幸福度レポートによると、寛容度と自由度が幸福感に大きく寄与することが示されており、この観点から北欧諸国が高い評価を受けています。寛容度と自由度の高いフィンランドは2024年も再び1位、スウェーデンも4位にランクインしました。日本も上昇傾向でありましたが、昨年より順位を下げ、世界で51位と北欧諸国に比べるとかなり低いランキングとなっています。

スウェーデンの社会では、個人間の差異を最小限にし、個人の尊厳と平等が重視される風土があり、加えて、ストレスの少ない社会づくりが根付いています。企業でも年功序列が存在しないため、厳しい上下関係によるストレスを抱えることはまずありません。さらに、顧客と業者との関係も緩やかです。

一方、日本には「お客様は神様」という言葉があるほど、お客様の要望に答えようとする、お客様第一主義が定着しています。そのため、日本のサービスや製品は高品質であると海外からも評価されています。

近年では「リーン」と呼ばれる日本型の生産方式が多くのスウェーデン企業で採用もされています。しかし、リーンを採用する企業で働くスウェーデン人の中には、これまで以上のサービス提供に伴うストレスを感じる人もおり、「なぜ顧客サービスをここまで強化する必要があるのか」と疑問を持つ人もいます。

「自分が働く側だったら」を常に考える

私の経験によると、スウェーデンの顧客サービスは日本ほど高くないものの、ほかのヨーロッパ諸国と比べると高いほうです。しかし、スウェーデン社会では、自分がサービス提供側に立った場合も考えているため、顧客側も過度なサービスを要求しません。そして、お互いを尊重しながら、極度なストレスをかけずに働くことが重要とされています。

そうした、お互いを尊重し強要しない社会のスウェーデンでは、ルールや規則を楽しんで守る方法を考案し実践しています。たとえば、ストックホルムのオデンプラン駅では、利用者にエスカレーターではなく、健康に良い階段を使ってもらうため、昇ると音が鳴る、ピアノの鍵盤に見立てた階段を設置しました。これにより普段より66%も多くの人が階段を利用するようになりました。

さらに、公園や道路でのゴミのポイ捨てを減らすために、ごみ捨て自体を楽しいものにするというアイデアから、音や声が出るゴミ箱が設置されている所もあります。実際に、私も子どもたちが面白がり、ゴミ捨てをする様子を何度も目にしました。このように、スウェーデンでは厳しい規律だけでなく、人々が面白がって自発的にルールを守る方法を模索しています。