1日分の野菜は本当に摂れるのか

厚生労働省の「野菜を食べようプロジェクト」では、2013年から新たなシーズンが始まり、「1日350g以上の野菜を食べましょう」という健康指針が全国に広まりました。

このプロジェクトでは、1日あたりの野菜摂取目標を緑黄色野菜120g、その他の野菜230g、合計で350gと定めていますが、これは量的な目標値だけで栄養面では具体的に示されていません。

しかも、野菜を摂ろうとする意識があるものの、実際に目標摂取量を毎日達成するのは難しいようで、ここ10年以上、日本人全体の平均摂取量は300gを切っています。

「1日分の野菜が摂れます」と表示した飲料が近年増えているのも、この野菜の目標達成が難しい消費者への訴求効果があるからだと考えられます。

写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
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しばらくの間、野菜に果物を加えて飲みやすくした「野菜とフルーツのミックスジュース」が主流でしたが、2004年に伊藤園が発売した「1日分の野菜」が登場し話題を呼びました。まさに、1日に必要とされる350gの野菜を使用している、今までにない野菜100%飲料でした。

ただし、350g使用と言っても、実際に使用している野菜の量は540gで、その絞りかすを取り除いて350gにしています。しかも、砂糖、塩は無添加です。

搾りかすのほとんどは不溶性食物繊維で、水溶性食物繊維はジュースの中に若干残ります。ジュースのパッケージに表示されている「難消化性デキストリン」とは水溶性食物繊維のことです。

成分表示を確認しながら野菜摂取の補助として活用する

野菜100%の飲料が浸透し始めると、各飲料メーカーからも野菜100%を主張する商品が次々と発売されていきます。最近では、トップバリューやセブンプレミアムを筆頭に、PB商品や地域性の高い野菜100%飲料も目立っています。

こうして開発競争が高まると、商品の質はどんどん良くなるものです。現代の野菜ジュース開発では、1日に必要な野菜の量(350g)だけを満たすのは当たり前で、さらなる付加価値を高めることにポイントが移ってきています。

例えば、「農薬含有量が心配な輸入野菜を使わない」「糖質を減らす」「製造は日本国内に限定する」など、安全で健康的な飲料として進化してきています。

市販の野菜ジュース製法のほとんどは、加熱濃縮された後に水を加えて還元したものです。野菜の栄養素には、一旦加熱されると破壊され消滅してしまうものがあり、その筆頭がビタミンCです。

一方、加熱に強く破損されにくい栄養成分や、加熱によってさらに体内の吸収が良くなる栄養成分もあります。「ジュースで1日分の野菜を摂ることができるか」という疑問に関しては、そうかも知れないし、そうでないかもしれないという、とてもファジーな答えしかできないのが現状です。

実際、野菜ジュースのパッケージには、十分な野菜の量も栄養も満たしていると記載されていても、「あくまで嗜好品として」飲むことが推奨されています。

人の体は個体差が大きく、必要な野菜の量や栄養は個人ごとに異なるので、効果は目に見えません。いち消費者の私たちにできるのは、市販の野菜ジュースを飲んで「これで今日の野菜ノルマは達成!」と安心せず、成分表示を確認しながら野菜摂取の補助として活用することが大事です。