スーツ購入額は30年で5分の1以下に

メンズビジネスウエア(いわゆるスーツ、ワイシャツ、ネクタイなど)の売れ行きは2005年以降右肩下がりを続けてきました。筆者がアパレル業界にいた90年代後半以降、多くのワイシャツメーカー、ネクタイメーカーが倒産してきました。

総務省の家計調査(2人以上世帯)によると、1991年に約1.9万円だった背広服(スーツ)の購入金額はコロナ禍の2021年には2721円にまで下落し、回復したとされる2023年でも3382円となっています。

2020年春から始まったコロナ禍によって、在宅ワークが長期間続いたことから、さらに急激に売れ行きが減ることになりました。実店舗営業ができなかったためアパレル企業は全体的に売れ行きが大きく落ち込みましたが、中でもメディアの目を引いたのが、メンズスーツ大手各社の苦戦でした。

青山商事、AOKI、はるやま、コナカのいわゆる紳士服チェーン大手4社の業績を見てみましょう。報道にもあるようにコロナ自粛が緩んだ直近の業績は軒並み底打ちを脱したという感じです。

※コナカのみ24年9月期第二四半期連結、他社は24年3月期連結 ※カッコ内は対前年同期比(各社IR情報より筆者作成)

大手は軒並みコロナ前の業績に届いていない

青山商事とAOKIは増収大幅増益、はるやまHDとコナカは減収ながらも大幅増益となっており、23年5月以降のコロナ自粛解禁が大きく後押ししたと考えられます。

ただ報道にあるように「復活」とまでいえるかというとそれは難しく、軒並みコロナ禍前の2019年度実績には届いていません。ですから「回復基調」くらいが実態でしょう。

実際に青山商事のコロナ前(2019年)の決算と比較してみましょう。

各社IR情報より筆者作成

売上高と本業の儲けを示す営業利益は、19年3月期は24年3月期を大きく超えています。この業績で減収減益なのですからその前年の18年3月期はどれほど好調だったかという話になります。他の3社もほぼ同様です。

AOKIも売上高は19年3月期には届いていません。

各社IR情報より筆者作成

かなり厳しいのがはるやまHDで、19年度比では大幅減収減益となっています。

各社IR情報より筆者作成

現在の売上高は19年度と比べて約30%減に終わっています。