今回の件でいちばん心配していること
6月16日には、この話題に注目が集まって、「X」では「音楽鑑賞」がトレンド入りしました。反響が大きかったとはいえ、必ずしも「音楽鑑賞」を批判する投稿ばかりだったわけではありません。
とはいえ、「能登半島地震で困っている人たちがいるのに、時期的にもずいぶん無神経」とか、「旅費は税金から出てるだろうから微妙」といった、批判的な書き込みも少なくはありませんでした。
しかし、たとえば、地震で困っている人がいるからと、多くの人が自粛生活を送ったら、経済が停滞して復興に悪影響がおよんでしまいます。
また、往復の交通費やホテル代は税金なのだから、仕事が終わってからはなにもせずに過ごすべきだ、という考え方は、その根拠がわかりません。むしろ、旅費が税金から出ているのだから、音楽くらい聴いて元をとってもらったほうがいいではないでしょうか。
しかし、いちばん心配なのは、このようにやっかみにしか聞こえない公務員たたきが横行すると、公務員になろうという人がいなくなるのではないか、ということです。
嬉々として報道したメディアの問題
最近、カスハラ、すなわちカスタマー・ハラスメントが社会問題化しています。これは顧客が企業や店舗などの従業員に対して理不尽なクレームをつけることを指し、にわかに問題化したのは、カスハラが横行した結果、従業員が大きな心的ストレスを抱え、働けなくなるなどの事例も多いからです。
富山県政記者クラブに寄せられた投書は、私にいわせれば、カスハラにかぎりなく近いものです。理不尽なクレームによって、公務員の就労意欲を削ぎ、ひいては公務員志望者すら減らすことにつながりかねません。
しかし、投稿者ばかりを責めるべきではありません。こんな理不尽な投書は、県政記者クラブの記者たちがスルーすればよかっただけの話です。なぜ、こんな投書にまともに向き合い、いちいち記事にしたのでしょうか。
メディアが率先して、世界の常識から外れた批判を加えて、公務員の仕事を無味乾燥なものに追い込み、将来に禍根を残そうとしているニッポン。こんなに病理が蔓延しているようでは、やはり「終わりではないか」と思ってしまうのです。