冬のボーナスが5年ぶりの増加に
このほど支給された国家公務員の2022年の冬のボーナスは5年ぶりの増加となった。
人事院が8月に今年度の国家公務員の月給とボーナスを3年ぶりに引き上げるよう勧告したのを受けたものだ。もっとも管理職を除く平均支給額は65万2000円余りで、増加額はわずか500円。平均年齢の低下などもあるとはいえ、岸田文雄内閣が民間企業に求めている大幅な賃上げとは比べるべくもない。
公務員の給与やボーナスは、民間の水準をベースに決めることになっている。参考にするのは大企業の賃金水準のため、中小企業などに比べて高い「役人天国」だという批判も根強くあるが、新型コロナウイルスで激減した民間のボーナスなどを参考に、夏のボーナスまでは削減が続くなど、公務員給与も「緊縮」状態が続いていた。
問題は今後、世の中が「賃上げ」ムードになってきた場合、公務員給与も「民間並み」の慣行に従って、増やしていくのかだ。
さすがに政府が賃上げを政策として掲げているからといって、民間に先んじて公務員の給与を増やすのは難しいが、民間が上昇すれば、それに比例した引き上げを人事院は求めてくることになるだろう。
人件費アップで防衛費はさらに膨張する
すでに消費者物価の上昇は3%を超えており、実質賃金を増やしていくには5%程度の賃上げが民間企業では「必須」になるに違いない。人手不足もあり、中小企業の間でも賃上げに踏み切るところが出てくるだろう。
おそらく、これに従って「民間並み」に公務員給与を引き上げていくことになるのだろうが、その「財源」を確保できるのかどうかだ。
岸田内閣は今後5年間の防衛費を43兆円とする方針を示し、その財源を巡る議論が活発化している。予算の剰余金なども防衛費に回すことや、すでに増税している「復興増税」分の一部を防衛費に充てることなど「やりくり」を強調しているが、不足分は増税するとして、法人税を中心に増税するという。増税に対しては自民党内からも反発が出ており、すんなり防衛費の増額分を手当てできるかどうかも不透明だ。
防衛費の増額の中身は明らかになっていないが、敵基地攻撃能力などを含めた防衛装備の拡充に回すことが想定されていると見られる。
一方で、自衛官などの人件費の増額は現段階では見込んでいないと見られる。公務員の人件費を増やせば、当然、自衛官の人件費も上昇していくわけで、そうなると本来の防衛費にしわ寄せがいきかねない。つまり、人件費の増加分も別途、財源を手当てしなければならないわけだ。