高年齢社員を戦力化する「出口戦略」が必要
今春闘での賃金改善をめぐる交渉は、春闘の本格スタートの前から、大手製造業を中心にすでに労働側の敗色が濃厚となっている。自動車、電機それぞれの労組で組織する自動車総連、電機労連は、昨年末までに賃金改善に向けた統一要求を見送る方針を確認しているだけに、労働側にとっては定昇確保による賃金水準の維持を死守するしかない。しかし、経団連の経労委報告は定昇について「制度の見直しを聖域にすべきでない」と明記し、65歳雇用義務化への賃金制度見直しと併せて、厳しい選択を労働側に突きつける。
その意味で、「2013年問題」は今春闘の最大の争点に浮上すると同時に、賃金交渉にも大きな下押し圧力として働くことは確実だ。賃金の目減りは個人消費の低迷に直結し、安倍晋三首相が最重要課題に掲げたデフレ経済脱却への重い足かせにもなりかねない。
ただ、企業は65歳雇用時代を迎える以上、高年齢社員の戦力化を図らなければならない。これまでのように定年後の再雇用で極端に賃金を下げた場合、働く意欲は失せ、企業にはマイナスに作用すると見るのが妥当だろう。このため、トヨタ自動車が定年後の生活費を補う新退職金制度の検討に入ったほか、大和ハウス工業やサントリーホールディングスが今年4月に65歳定年制に踏み切る計画など、65歳雇用時代を見据えた新たな対応を急いでいる。
65歳雇用問題に詳しい某人材コンサルタントは「企業は賃金だけでなく、現役世代からの研修などを含め、65歳までの人材を戦力化する『出口戦略』を早急に構築する必要がある」と指摘。春闘に限らずとも、「2013年問題」は企業に待ったなしの対応を迫っている。