会社人生を大きく左右するのが、人事部の「閻魔帳」である。普段、顔を突き合わせることもまずない人事部の面々は、社員の“地獄行き”“極楽行き”をどうやって決めているのか?
理念に行動が伴っていない社員
ワタミの人材開発グループ長の岡田武氏は、筆者の取材にこう切り出した。
「社員には、この会社は誰にとってもいい会社ではないと言っています。当社が何よりも大切にしているものは理念です。この理念に共感できる人でないと、ワタミの社員であり続けることは難しくなってくる。そのあたりが“境界線”になる」
その理念の一つが、社員の名刺にも記してある「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集めるグループになろう」だ。
同社はグループ全体で正社員が4000人を超え、非正社員は3万人ほどになる。これだけの規模に達すると、組織を束ねる求心力が必要になる。そこで創業者であり、会長の渡邉美樹氏が説く理念を様々な形で社員の意識に浸透させようとしている。
しかし、最近は渡邉氏の考えや発言などを頭では理解するものの、日々の職場でそれに伴った行動がとれない社員もいるという。
「理念を表面的にとらえてしまっている。現場では、何よりもお客様やスタッフへの気配りとコミュニケーションなどが大切。つまり、リーダーとして全人格が問われている。どんないい言葉を発していても行動が伴っていなければ、決して人はついてこない」(岡田氏)
人事評価でも、理念を体得できているかどうかが判断材料となる。新卒で正社員として入社すると、まずはグループの中核である「ワタミフードサービス」が運営する店舗や、「ワタミの介護」が運営する介護つき有料老人ホームなどに配属される。