賃金制度は、職務給となっている。例えば「ワタミフードサービス」では、入社1年目であっても、店長に昇格すればそれに応じた給与や賞与が与えられる。一方で、店長になることができない人は、たとえ5~6年働こうとも、それに見合った待遇を得られない。
店長らを評価する評価基準は、大きく2つに分けられる。1つは、店舗の売り上げや利益などの目標を達成する「業績評価」。もう1つが「力量評価」だ。それぞれ50%の比率で5段階で評価される。
後者の「力量評価」が、同社の評価システムの特色である。コミュニケーション力や、問題を設定しそれを解決していく力などが評価項目となっている。ここでも、理念の体現者としてお客様から感謝されるような姿勢であったかどうかが重視されている。
「力量評価」には、“ワタミ流人事の妙”が隠されている。例えば、売り上げの多い競合店が近くにあるときは、一定の配慮がなされた評価が行われる。こうして、成果(業績)主義の導入を進めるために職務給にしながらも、日本企業の強みである“和”を保とうとしているのだ。
この選抜の仕方は、その後のステージでもおおむね同じである。例えば、DFC(ダイレクト・フランチャイズ=社内独立)制度を使い、独立して店舗を構えるときにも、関連会社などを含め経営幹部になる際にも、人事部が確認するのが「理念の体現者であるかどうか」だという。
ただ、会社の規模が大きくなると、新たな問題の発生も懸念される。
人事部がつくる考課とは異なる、好き嫌いなどの主観で部下を判断する管理職が現れる恐れがあるのだ。
大企業では、人事部員がすべての社員を直接評価することは困難だ。管理職の言い分の比重がおのずと高くなる。そこに、人事部が求めているものとズレが生じるのは宿命的といっていい。
同社は、この課題の克服のために管理職らの教育を徹底させている。教育人事企画チームの課長である山内一成氏は、「1人の管理職を直属上司が評価するだけではなく、その部下からの評価も実施し、参照するようにしている。これからも公平になる仕組みをつくりたい」と言う。