「どうすれば部下を動かせるのか」という発想は間違い

では、管理職にとってのメリットは何だろう。一般的に、管理職は自分の部署の予算や利益にのみ着目しがちだ。これでは部署間で予算の奪い合いや利益の競い合いが起きてしまい、横のつながりによる相乗効果は見込めない。だが、会社全体の数字を会計視点・経営視点で見ることができれば、全体利益に向かって他部署と協力する姿勢が生まれやすくなる。

松本興産では毎年、「ロケット製品を作りたい!」「加工機械にMKKのロゴがつくように加工機械会社とコラボしたい!」などの「夢を語る会」を行っている 写真提供=松本興産

また、管理職自身が会計知識を持っていれば、部下にもその重要性を伝えられるだろう。

「どうすれば部下を動かせるのか」と悩む上司は多いが、松本さんは「そもそもその発想が間違い」と指摘する。

「『動かす』と言っている時点で、相手ではなく自分のことを考えていますよね。本来は、部下が自立して『動ける』ようにしてあげるのが上司の役割。部下の立場になってみれば、背景がわからないのにただ指示されても動きようがなく、不満がたまるばかりでしょう。それを防ぐためにも、共に会計知識を持ち、指示の背景となる数字を共有できるようにしてほしいと思います」

会計は生きる知恵、自立する知恵になる

そして社員にとっての最大のメリットは、仕事が面白くなること。会計がわかれば経営層の意図がわかり、自身の役割や目標も明確になる。さらに、会計は幅広い業界で通用するスキルであることから、転職や起業の武器にもなる。身につければ人生の選択肢は確実に広がるだろう。

「会計知識は、経営者や会社員はもちろん、そうでない人にとっても生きる知恵、自立する知恵になる」と松本さん。そのことをより多くの人に知ってもらえるよう、風船会計メソッドを世界中に広めていきたい──。目を輝かせながらそう語ってくれた。

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