「会計嫌い」は教え方のせい

風船会計メソッドを用いて社員に会計を教えるという試みは、松本興産に大きな効果をもたらした。とはいえ、このメソッドがどんな人に対しても有効かというと疑問は残る。会計に苦手意識を持つ人や勉強嫌いの人は少なくないからだ。

「それは教え方が悪いからだと思います。私は教えるときはいつも『家で勉強しないで!』と言っています。風船会計メソッドは、今この場で90分間だけ学べば理解できるように設計してあるからと。会計の本質や考え方を学ぶ上で、自宅での予習復習や用語の暗記は一切不要だと思っています」

また、学ぶ際には「会計がわかると何がいいのか」を知っておくことも大事だという。そこで松本さんに、経営層、管理職、社員それぞれにとってどんなメリットがあるのか、解説してもらった。

撮影=プレジデントオンライン編集部
手作りのコインや風船などのイラストを使って「風船会計」を説明する松本めぐみさん

売り上げだけでなく利益を伝えないと意味がない

まず経営層の視点から見て、社員が会計を知ると何がいいのか。

多くの経営者は社員と売り上げ目標を共有するが、これでは社員は目標を達成できなければ後ろ向きになり、達成すれば「なのになぜ給料が上がらないのか」と不満を持ってしまう。

「だから売り上げではなく利益を伝えないと意味がない」と松本さん。社員が会計知識を持ち、利益の仕組みを理解していれば、「自分の給料を上げるには会社の利益を上げる必要がある、それなら製品の利益率を上げてはどうか、そのために自分は何をすべきか」というような考えも湧く。利益の上げ方を自発的に考えるようになるのだ。

「経営者は孤独になりがちですが、全員で会計視点を共有できれば、それが社員との共通言語になります。経営者がビジョンや実現するにあたって必要な利益などを語ったとき、腹落ちしてくれる可能性も高くなるでしょう」