世界では健診の見直しが進んでいる
一方、世界的には健診のあり方を見直す動きが進んでいます。1960年代以降、世界保健機関(WHO)やアメリカ、カナダの団体が健診の検証を呼びかけたことが、USPSTFなどの事業につながりました。その運動の中にいたデイヴィッド・サケットという人がのちに「エビデンスに基づく医学の父」と呼ばれるようになります。
一方、日本の学校健診はエビデンスに基づいていません。「診察はやればやるほどよい」という安直な考えがまかり通り、冒頭に紹介したようなトラブルを引き起こしています。
医師の利権のために子供を虐待している
「過剰な検査」は「過剰な治療」に結びつきます。
本当は要らないはずの無駄な薬、無駄な手術を行うことは、健康のためどころか有害です。子供に副作用のリスク、手術合併症のリスク、重い病気ではないかという不安を与えるだけでなく、重い病気を診断されたという事実が将来の結婚・就職・保険加入に不利に働くことも考えられます。
また、無駄な診察のために大量の公的資金と貴重な医療従事者の労働力が費やされていることも問題です。
私はまず学校健診を完全に廃止すべきだと思います。効果不明で逆効果の疑いさえある健診によって、リソースが無駄遣いされるだけでなく、子供の心身を危険にさらしているからです。
そのうえで、健診の効果を検証するために、それぞれの検査項目が本当に必要なのかどうか、検査するグループとしないグループを作って比較する必要があります。この試験を実行するためには、前提として一斉健診が廃止されていなければなりません。
合理的な検証ができなければ、日本の医療体制は医師の利権のために子供を虐待しているのだと批判されても、言い返すことはできないでしょう。