消費者にも影響するシステム障害が増加傾向

その原因はリソース削減策の中、老朽化したシステムの全容を知るベンダー企業の有識者を引き留められず、十分な引継ぎもできなかったため、管理能力と対応力が低下したからだと考えられている。

みずほFGは、老朽化した基幹システムの刷新に4000億円超を投じたとも言われており、“IT業界のサグラダファミリア”と揶揄されてしまった。

そのほかにも、ミドリ安全の商品出荷停止(昨年9月25日)、銀行間送金システム「全銀システム」の振り込み遅延(昨年10月10~11日)、山形銀行のATM・インターネットバンキングのサービス停止(今年5月22日)など、消費者にも甚大な影響を及ぼすシステム障害が相次いだ。

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の公開情報によれば、著名企業によるシステム障害事例は年々増加傾向にあり、今後も基幹システム刷新に伴うシステム障害が発生する可能性は高い。

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老朽化システムからの脱却はメリットだらけ

日本よりデジタル化が進んでいる米国やドイツなどでは、主に2つのプロセスを踏んで、老朽化システムから脱却しているケースが多い。

1.システム運用を軽くするため、既存のオンプレミス環境(サーバーやソフトウェアなどを、自社が管理する施設内で保有し運用するシステムの利用形態)に構築されたインフラをクラウド環境に移行する。
2.老朽化システムを、変化に柔軟かつスピーディーに対応できるマイクロサービス(密結合から疎結合へ)に移行し、システム間をAPI連携する。

一般的に2つのプロセスは、「既存システムのモダナイゼーション」と表現される。これが実現できれば、システム障害時や機能追加の際の影響調査、リリース前のテスト工程を大幅に短縮できるため、システム運用・保守を効率化・省力化できる。

このように企業に多くの利益をもたらすにもかかわらず、老朽化システムから脱却できないのは、有識者の不在と肥大化・複雑化したシステムの影響調査、そして関連業務の絞り込みができないためだろう。

だが、2025年が目前に迫る中、現状で足踏みし続けても、あらゆる企業を“デジタル企業”に変貌させることはできない。一足飛びに老朽化システムから脱却することはできないのだろうか。