未就学児のほうがより高リスク

こうして小中学生が熱中症で亡くなった事例は多数ありますが、じつは0〜6歳の未就学児のほうがさらに多く熱中症で亡くなっています(※2)。小学生以上の子供に比べて、より体温調整機能が未熟で、判断力も低いためです。例えば0歳であれば、「熱いから服を脱がせて」と保護者に伝えることさえできません。

以前、幼稚園バスに子どもが置き去りにされて亡くなる事件が立て続けに起きたことを覚えているでしょうか。2021年7月、福岡県の私立幼稚園の通園バスに5歳の男児が置き去りにされ、熱中症で亡くなりました。このことが大きく報道されたにもかかわらず、翌2022年には静岡県の幼稚園の通園バス内で、同じように置き去りにされた女の子が熱中症で亡くなったのです。きちんと確認をしていなかったのでしょう。

2023年には大型量販店の駐車場で、自家用車の中に置き去りにされた生後10カ月の子が、2時間半の間に熱中症で亡くなりました。5人家族で出かけ、両親は互いに相手がその子を連れていると思っていたとのことです。そこまで重大なことにならないまでも、屋内のサンルームで遊んでいて腹痛や嘔吐、体の痛みを訴え熱中症になる子もいます。

※2 厚生労働省「年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和4年)

熱中症予防のためにできること

こうした事故を予防するためには、どうしたらいいでしょうか。まず、子どもを一人にしないことが大切です。屋外はもちろん暑い室内、車などに子どもを置き去りにしないようにしてください。「よく眠っているから」「クーラーを付けているから」「短時間だけだから」と思ってもやめましょう。睡眠より安全が優先ですし、子ども自身が誤ってクーラーのスイッチを切ることがあるかもしれませんし、短時間のつもりが長くなるかもしれません。

車の場合は、キーを車内においたまま子どもがロックを掛けてしまい、閉じ込められるかもしれません。JAF(日本自動車連盟)が車内に子どもを残した状況を想定して行った実験では、33℃の炎天下でエアコンが止まると、車内の温度は5分後に警戒域、10分後に厳重警戒域、15分後には危険域に達しました。

写真=iStock.com/liebre
※写真はイメージです

次に、子どもをよく観察することが大切です。顔が赤くないか、汗をたくさんかいていないか、元気がなくなってきていないかに注意します。水分は見えるところに置いて、ほしがったらすぐに飲ませます。乳児の場合は母乳か育児用ミルク、それ以上の場合は水やお茶と塩分のあるおやつがいいでしょう。また普段から睡眠・食事をしっかりとる、暑い場所で長く遊ばせ続けない、涼しいところでしっかり休憩を取る、気候に合わせた涼しい服装をする、屋外では帽子をかぶるなど工夫しましょう。厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」日本気象協会「熱中症ゼロへ」を参考にしてください。