川勝知事はなぜリニア妨害を始めたのか

「あたかも、水は一部戻してやるから、ともかく工事をさせろという態度に、わたしの堪忍袋の緒が切れました」

2017年10月10日のこの川勝氏の発言で、静岡県の「リニア騒動」が始まった。

当時、JR東海と大井川流域の利水者11団体との間で、静岡工区着工に向けた基本協定を結ぶ詰めの交渉が行われている最中だった。

ところが、川勝氏は「堪忍袋の緒が切れた」と怒りをあらわにしたあと、「水問題に具体的な対応を示すことなく、静岡県民に誠意を示すといった姿勢がないことを心から憤っている」などとさらにヒートアップした。

そして、「勝手にトンネルを掘りなさんな」と基本協定の交渉にストップを掛ける「ちゃぶ台返し」をしてしまった。

この日の知事会見を皮切りに、川勝氏による無理難題の言いたい放題が始まり、「リニア騒動」と呼ばれるさまざまな混乱が続いた。

問題となった金子前社長のあいさつ

2018年夏から、静岡県は2つの専門部会を設置して、JR東海との「対話」を始めたが、何らの進展も見られなかった。

この事態に国は、リニア工事による大井川の水環境への影響を科学的、工学的に議論する「有識者会議」の設置を決めた。

2020年4月17日に開かれた第1回会議の冒頭でJR東海の金子社長(当時)があいさつをしたが、その中身がさらに静岡県との溝を深めることになった。

写真=JR東海提供
川勝前知事と金子JR東海前社長

金子社長は以下のように述べた。

「南アルプスの環境が重要であるからといって、あまりに高い要求を課して、それが達成できなければ、中央新幹線の着工が認められないというのは法律の趣旨に反する」
「有識者会議におかれては、静岡県の整理されている課題自体の是非、つまり、事業者にそこまで求めるのは無理ではないかという点を含めて審議してもらいたい」
「それが達成できなければ、工事を進めてはならないという静岡県の対応について国交省は適切に対処をお願いしたい」

金子社長は、このままではリニア工事に入れないので、静岡県の対応を何とかしてほしいと有識者会議、国交省への強い期待を率直にそのまま述べてしまった。