モチベーションを維持するための声がけ

ただし、これを毎日続けるのは、よほど強い意志がないと難しいだろう。

「“何が何でも合格したい”という強い意志がある人でも、時にはサボりたくなることもあるし、モチベーションが下がることもあるでしょう。すでにやる気を失っている人はノートを書くこと自体、ハードルが高いと思います。

そこで必要なのが、周りのサポートです。親でも友人でも塾の先生でもいいので、“やらなければ叱られ、やったら褒めてもらえる”環境を作ってあげるのです。

ですから私は、自分の生徒たちには全員、授業後のノートを必ずチェックし、『よくできました』のスタンプを押していました。小学生の児童の宿題に担任の先生が押すようなスタンプですが、医学部受験する“大人”にもこれは十分効果がありますよ。夜ノートも写真に撮って自分のLINEに送ってもらうようにして、見たらすぐに一言コメントなりスタンプなりを返信しました。人は、自分の努力を見てくれている人がいると思うと、力が湧いてくるものです」

写真提供=医学部専門予備校D組
よくできましたのスタンプ

適切な声かけとリアクション。七沢さんは就寝前のLINE返信を全員にするまでは寝ない。時には外で飲食している際にも即返信するという。ここまでの徹底ぶりはできなくても、さりげなく寄り添うスタンスは小学生の子供を持つ親の参考になるかもしれない。

基本フレンドリーな七沢さんだが、それでもサボった場合は、すかさず喝を入れる。

「1度2度ならともかく、3日連続で出さない子には、『やりたくないならもう受験やめれば? 俺の人生じゃないから全然いいよ』『時間とお金がもったいないから、(受験を)止めるなら今すぐやめよう』『赤の他人のおじさんに、こんなこと言われて悔しくないの?』などとストレートに言います」

褒め方はどうしているのか。

「褒めるなら、具体的に。ここがポイントです。例えば、夜ノートを始めて1週間続けられた人には『1週間続いたね』と努力を認め、自分の言葉でコメントをノートに書いてあれば『すごくいいノートだね』などと評価します。継続できたとき、工夫が見えたとき、ノートに反省点が明記されているときが“褒める”チャンスです」

ただ、こうした習慣を続けても、成績に結びつかなければ、やはりやる気はダウンしてしまう。そんな時、七沢さんは叱ったり怒ったりしない。こう声をかけるのだ。

「1カ月続けられたからといって、翌月点数が上がるものではないよ。長い日数をかけて、山あり谷ありでだんだん伸びていくんだよ」

「日々の努力は薄い紙を重ねるようなもの。その成果は、数日や10日では微々たる厚みにしか見えないけれど、100日、200日と続ければ分厚くなる。だから、とにかく続けること」

くじけずに自分を信じて続ける。泥臭く、やり抜く。その大切さを教え続けたのだ。