欧米の投資家からは「不適切な経営形態」と見られてきた

三菱商事を例にとればローソンに出資をして経営陣に商社マンを送り込むだけではなく、周辺の食品会社や物流会社にも出資していきます。さらには海外から輸入する食材についても、ただ輸入するのではなく海外のサプライヤーに同じように出資して人を送ります。

このやり方でローソンの例ではローソン単体の時価総額ではなく、コンシューマー産業セグメントと食品産業セグメントの全体利益で儲けていくのです。

このように総合商社が投資ビジネスを展開する結果、多数のセグメントに事業が分散する構造になります。三菱商事は天然ガス、総合素材、金属資源、産業インフラなど10のセグメントを業績の単位にしています。三井物産は7つ、伊藤忠は8つといった具合に、それぞれが関連の薄い複数のビジネスを抱える投資会社になるのです。

そしてここが面白いところなのですが、欧米の投資家の目からはこのような事業構造が「不適切な経営形態である」と長年見られてきたのです。専門用語では「コングロマリットディスカウント」というのですが、それぞれ相互に関連のない事業を多数抱える経営形態のことをコングロマリットといって、それは通常の企業よりも株価がディスカウントされる(安くみられる)傾向があったのです。その考えに逆転の目を向けたのがウォーレン・バフェット氏だったということです。

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バフェットは逆転思考から商社株の買い増しを選んだ

大手総合商社は日本国内でも飛びぬけて優秀な人材を多数採用し、それぞれに国内でもダントツレベルの報酬をあたえる。その意味では人的資本経営の教科書のような経営スタイルです。そして多数の領域に投資が分散している理由は、20世紀を通じてそれぞれのセグメントで長い歴史のあるビジネスを展開してきたからであり、そこには各業界での存在感という経営資産があります。

そう考えると事業領域が8とか10に分散していることはマイナスではなく、むしろ強みがそれだけたくさんあるからだと考えられる。まさにバフェットはそのような逆転思考から、株式市場で割安に評価されている商社株を「上限9.9%まで買い増す」ことにしたのでしょう。

さて、ここまでのことを基礎知識として住友商事の今期の決算を見てみましょう。