家自体は無事でも、室内は安全ではない
果汁で描いた図柄が、温めると浮かび上がる「あぶり出し」の実験を思い出してみてください。このように、強い揺れは、地面の下に隠されていた地盤の様子をあぶり出してしまったのです。
もっとも、倒壊を免れた家屋でも、家の中は洗濯機を回したようにぐちゃぐちゃでした。家はしっかり残っていても箪笥の下敷きになって圧死した方が大勢いました。反対に、家具を留めていただけで命拾いをした人の話もいくつも聞きました。
地盤の良し悪しだけではなく、こうした家の中の状況も大地震が来る前に改善しておかなければならないのです。特に、就寝中に倒れてくる家具によって大ケガすることだけは、なんとしても避けたいものです。
阪神・淡路大震災の際には、最大震度7の地域が、東西方向に帯のように出現しました。ここでは、地面から突き上げる力が非常に強く、無重力の状態が一瞬起きるほどでした。くわしく説明してみましょう。
震度7で人間に襲い掛かる衝撃
地球上の物体にはすべて「重力」がかかっています。この力はGという記号で表します。重力加速度の単位ですが、1Gは地球上の物体にかかる力です。この1Gを超える力が上向きにかかると、無重力になります。
遊園地のジェットコースターや急流すべりなどの絶叫マシーンで、重力に逆らったときに体感するあの感覚です。たとえば、スペースシャトルを打ち上げるときに宇宙飛行士にかかる力は3Gです。ちなみに、重力加速度が7Gを超えると人間は失神すると言われています。
阪神・淡路大震災で震度7を経験した私の知人は、テレビが宙に舞うのを見たと言っています。本当は、その本人も椅子ごと空中に飛び出していったはずなのですが……。
もし会社のオフィスで震度7に遭遇したらどうなるでしょうか。書類が紙くずのように飛び散るだけでなく、キャスターの付いた椅子やパソコンなど、壁に固定されていないすべての物体が飛び出すのです。スーパーマーケットならば、棚に並んだ商品が吹雪のように舞うでしょう。