値上げ以外の「3つの客単価アップ法」

本来であれば物価の上昇とともに、メニューへ価格転嫁していくべきなのですが、どうしても価格を上げたくないという社長の意思があったため「値上げだけが客単価をアップさせる方法ではないですよ」と、次の3つの施策を社長に提案しました。

1.松竹梅戦法

まずは「松竹梅戦法」です。居酒屋と言えば、棚にボトルキープされた焼酎。この焼酎は、1種類しかないお店が多いのですが、ここに少しテコ入れするだけで、客単価アップにつながるのです。

まず焼酎を3種類用意して、それらに松・竹・梅とランクをつけます。現在ボトルキープ用で販売している焼酎の売値が2000円だった場合、それを梅ランクの焼酎にして、竹ランクの焼酎3000円と松ランクの焼酎5000円、全部で3種類を用意するのです。

そして、ボトルの注文が入った際にお客様に3つのランクから焼酎を選んでもらう。そうすると、お客様はどのランクの焼酎を選ぶと思いますか?

焼酎(写真=パブリックドメインQ/CC-Zero/Wikimedia Commons

なぜ商品は「3種類」が儲かるのか

「もともとみんな2000円の焼酎をキープしていたんだから、2000円の焼酎だろう」、そう思われるかもしれませんが、実際には違います。

これは行動経済学の法則なのですが、価格帯が3つある場合、6割の消費者は真ん中のグレードを選ぶ傾向にあるというデータがあります。つまり、このケースであれば竹として提供している3000円の焼酎を選ぶ人が最も多いことになります。

ですから、この法則を活かすならば、竹の焼酎を最も利益率のいい焼酎にして提供すると、客単価と利益率がグッとアップすることになるのです。もちろん、梅として提供している2000円の焼酎が売れることもありますが、もともとはそれを売っていたわけですから損になることもありません。

ちなみにこの松竹梅戦法のポイントは、商品を3つ作ることにあります。2つではダメです。2種類だと高い焼酎と安い焼酎を選んでもらうことになるので、そうなると大抵のお客様が安いほうの焼酎を選ぶ傾向にあります。

ですから3種類、これが最もバランスがとれています。