飲食店の客単価を上げるにはどうすればいいのか。税理士の松岡靖浩さんは「商品の価格帯が『松・竹・梅』の3つある場合、6割の消費者は真ん中の『竹』グレードを選ぶ傾向にある。この法則を活かして『竹』を最も利益率のいい商品にして提供すると、客単価と利益率がグッとアップする」という――。

※本稿は、松岡靖浩『会社をつぶさない社長の選択』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

居酒屋が並ぶ夜の通り
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赤字続きの居酒屋が「まず手をつけるべきこと」

私の顧問先の、ある赤ちょうちん居酒屋の話です。

そのお店はそれほど広くなく、スタッフもほとんどいない中で何十年と営業を続けてきました。しかし、時代の流れには逆らえず、経営状態も段々と厳しくなり、今では赤字が続き、なんとかして売上を挽回したいということで私の元に相談に来ました。

「まずどこから手をつけていきましょうか」、そう聞いてみると、社長は「広告を出そうかな」と言うのです。

そこで私が「社長、広告よりも先にやることがありますよ」と言うと、社長は不安そうな表情で「売上を上げるなら広告を出して、客を入れないとダメじゃないですか?」と聞いてきたので、上の表(図表1)を書きながら丁寧に説明することにしたのです。ちなみにこの表は、単純に客単価または客数を今より3%アップした場合の数字です。

「広告を出す」は効率が悪い

もちろん、お店にやってくるお客様が増えれば売上は単純に増えていきます。ですから、広告を出してお客様を増やすという施策も検討する余地はあります。

しかし、お店がそれほど広くないことを考えると、限られたキャパシティの中でお客様が増えても、それほど売上は上がりません。それを考慮すると、客数よりもまずは客単価を上げていくところから手をつけるべきなのです。

上記の表では、客数(回転率)と客単価、それぞれ3%増えた場合の利益の比較をしています。客数が3%アップした場合は利益率が112%増加するのに対し、客単価が3%アップすると利益率が130%増加するという結果になっていますね。

つまり、客単価をアップしたほうが、客数が増加するよりも圧倒的に効率がいいということです。

このことを社長に説明しましたが、それでも社長の表情は渋いまま、なかなか納得はしてくれませんでした。その理由は「価格を上げるとお客様が離れていっちゃうよ」と、値上げに対する不安が原因です。