先行者利得を獲得したSKハイニックスの戦略

エヌビディアとSKハイニックス、TSMC、米韓台の主要半導体企業は連携を強化し、GPU、HBMの分野でAI関連需要を獲得した。ファウンドリ分野でTSMCを追いかけるサムスン電子、同分野で遅れた米インテルのシェアは低下した。

需要が変化したため、メモリー分野でのHBMの重要性は高まった。従来、パソコンやスマホのメモリー半導体は、画一的な製造手法で価格競争力がシェア獲得に重要な役割を果たしてきた。

それに対しSKハイニックスはエヌビディアのニーズに対応することを優先し、HBM市場で先行者利得を獲得した。世界の半導体産業のビジネスモデルは、ウィンドウズ搭載PC用の画一的なチップから、主にAI向けカスタマイズへシフトしたのである。

多様なニーズに対応するため、他企業とのアライアンスやコンソーシアムの重要性も高まっている。製造工程での微細化に加え、複数のチップを一つにまとめる“チップレット生産”を重視する企業も増えている。

既存事業を重視する企業は出遅れている

AI分野の加速度的な成長で、GPU、HBMの供給は需要に追い付いていない。GPU分野で、AMDやインテルも開発体制を強化した。それでも、エヌビディアの優位性は高い。1月~3月期の決算を見ると、AMDはゲーム向け半導体事業が収益の足枷になった。インテルはファウンドリ事業の遅れなどが業績を圧迫した。

いずれも、既存事業が先端分野の需要急増への対応を難しくした。それはHBMにも当てはまる。HBMの発明者であるSKハイニックスは、より有利に需要を獲得している。同社によると、2024年のHBM受注枠は埋まり、2025年もほぼ埋まった。サムスン電子とマイクロンテクノロジーも8層から12層への移行を急いでいるが、エヌビディアとの関係強化でSKハイニックスがリードしている。

AI分野の需要の獲得をめざした競争も激化する。特に、中国勢はGPU、HBM両分野で研究開発と生産体制を急速に強化している。通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は政府の補助を受けてGPU、HBMの開発を強化し、2026年からの生産を目指しているようだ。ファーウェイは上海に半導体製造装置の研究開発拠点も設ける計画だという。