日本でも新型メモリー企業の創設が待たれる
一方、HBMはそのレベルまで至っていない。GPUとHBMをセットで活用することがAI分野の成長実現に欠かせない。わが国で新型メモリー企業を創設・育成する意義は大きい。ラピダスを例にすると、まず民間企業の共同出資で新しいメモリー半導体メーカーを設立する。事業戦略を迅速に立案し、政府は工場建設などを支援する。内外のAI、半導体関連企業と関係を強化し、受託製造ニーズを取り込む。
既存の企業を活用する手もある。SKハイニックスはキオクシアにHBMの生産協業を打診したようだ。政府による補助金支給への期待、部材メーカー等との関係強化があるだろう。関連企業の事業戦略として、海外HBMメーカーの要請に迅速に応えることは先端分野での需要獲得に重要だ。あるいは、大学発のスタートアップ企業が新型AIチップを開発し、生産を国内企業に委託する展開も考えられる。
GPU分野で独走態勢のエヌビディアでさえ、投資に失敗したことはあった。それでも、創業経営者の諦めない姿勢が、GPU創出、AI分野の需要獲得を支えた。戦略物資として半導体の重要性が高まる中、そうした企業のリスクテイクが難しくなると、経済成長に負の影響があるだろう。わが国でのGPU、HBMなどの生産に向け、政府が民間企業のリスクテイクをより強力にサポートする必要性も高まっている。