中国は一帯一路沿線にデータ経済圏を確立か

“中国のエヌビディア”と呼ばれる、中科寒武紀科技(カンブリコン)もGPU開発を強化している。中国のDRAM大手、長鑫存儲技術(CXMT)もHBMの製造を準備しているようだ。同社は、米国の規制対象でない半導体製造装置の確保を急いでいるという。

2021年から2022年にかけて、世界で出願された半導体関連の特許件数で中国はトップだった。ソフトウェア面で中国半導体業界の成長意欲は高い。中国政府はバイドゥなどの生成AI開発支援も強化し、経済と社会への統制を強めようとするだろう。さらに、AIチップ、サーバーなどを一帯一路沿線地域に輸出し、中国中心のデータ経済圏の確立を目指すことも考えられる。

AI分野の成長の加速で、GPU、HBM、チップレット生産に対する需要は増加し、競争も激化するだろう。先端分野で米中の対立も先鋭化しそうだ。AIチップ、製造装置、チップレットに使う素材分野で、米国政府が対中制裁や輸出規制を一段と強化する可能性は高い。

半導体
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日本経済の将来はラピダスの動きにかかっている

わが国がAI分野の需要を取り込むカギは、GPU、HBM、チップレット生産に必要な部材、製造装置分野にある。わが国の関連企業の競争力は世界的に高い。政府と企業はそうした優位性を生かし、GPU、HBMの国内生産を目指すことが必要だ。それは、中長期的なわが国経済の成長に寄与するはずだ。

特に、HBM分野で対応の強化は急務だ。現時点でわが国に、HBMを生産できる企業は見当たらない。2025年前半までにラピダスは、2ナノメートルの回路線幅を持つロジック半導体の試験生産を行う予定だ。米IBMや蘭ASMLなどはラピダスと協業を強化する。補助金政策の運用も含め、ラピダスの意思決定のスピードが、新しいAIチップの創出を支えるとの期待もある。