中国株→日本株に振り向ける投資家が増加
4月中旬以降、世界的に株式市場が不安定化している。株式市場を取り囲む経済環境に変化が出ているためだ。
頭に入れておくべき主な変化の一つは、米国の金融市場の環境変化だ。年初、主要投資家はFRB(連邦準備制度理事会)が景気の減速や大統領選挙に配慮し、年内に7回程度の利下げを実施すると前のめり気味に考えた。
それに伴い金利は低下し、“マグニフィセント・セブン(GAFAMとテスラ、エヌビディア)”など、成長期待の高い銘柄の株価上昇の勢いは強まった。円安の加速、中国株からの資金振り向けなどもあり、日本株を買い上げる海外投資家は増えた。3月中旬、日経平均株価は史上初めて4万1000円台を上回る場面もあった。
しかし、ここへきて、想定以上に米国経済が強いことが明らかになった。主要投資家の予想する利下げ開始時期は後ずれした。年内の利下げ回数予想は1回程度だ。テスラやアップルの成長鈍化懸念も高まった。中東情勢の緊迫感も増した。
世界的なインフレ懸念が再燃している
それに加えて、インフレの再燃で米金利が上昇する懸念もある。イランがホルムズ海峡の封鎖を警告して原油価格が上昇すると、インフレ懸念が高まるだけでなく、世界のサプライチェーンの機能低下も想定される。
世界経済全体に与える影響は重大だ。金価格の上昇などを見る限り、リスク回避に動く投資家は多い。当面、世界の株式市場から不安定要素を完全に払拭することはむずかしいだろう。
年初から3月まで、米国の株式市場では、一部のIT先端銘柄の株価上昇が鮮明化した。特に、AI関連銘柄の株価上昇の勢いは強まった。エヌビディアは82.5%、メタは37.2%上昇した。主要なIT先端銘柄が構成するナスダック100インデックスの上昇率は8%だった。
株価上昇を支えたのは、経済の成長期待と金利低下だった。2022年3月以降、3倍速(0.75ポイント)の利上げを含め、FRBは金融引き締めを強化し物価の沈静化に取り組んだ。
2023年10月、米国の長期金利は5%を上回った。金利上昇によって、米国などの物価上昇圧力は一時鈍化した。労働市場の引き締まり方もやや緩んだ。商業用不動産向けローンの焦げ付き懸念も高まった。