100人中1人が好きになってくれればいい

【山口】でも、アイデアがユニークですよね。

荻原猛、北川共史、真野勉、山口拓己『LOCAL GROWTH 独自性を活かした成長拡大戦略』(クロスメディア・パブリッシング)

【井手】そもそも、よそで見たことがあるようなことをしても、仕方がないだろうとは思っています。ヤッホーブルーイングでは、エールビールという日本では主流でないビールをつくっています。100人中1人が好きになってくれればいいと思っている会社なんですね。

最初から100人に好かれようとするのではなく、好きになってくれた1人を徹底的に楽しませることで、長くお付き合いできる関係をつくれたらいいと考えているんです。

【山口】そういえば、南極観測隊の出発日に、御社のビールを届けたエピソードがありますよね。

【井手】ええ、サブスク解約の電話から生まれた話ですね。「ビールを年間契約したんだけれど、南極に行くことになったから解約したい」と連絡をいただき、「それじゃあ、出発日にエールを送ろう」と、よなよなエールを持って成田まで行きました。

「究極の顧客志向」でファンをつくる

【山口】そんな素敵な経験をしたら、その人はこの先一生、御社のビールを飲み続けてくれるかもしれませんよね。軽井沢から成田までの交通費を考えると短期的に見たらマイナスかもしれませんが、長期で考えるとものすごいプラスを生んでいるかもしれない。「究極の顧客志向」とはこういうことですね。

【井手】以前、PR TIMESでプレスリリースを出した「隠れ節目祝いbyよなよなエール」にしても、それを祝われて嬉しい人は、全体のごく一部ですよね。ターゲットはとても狭い。

「隠れ節目祝いbyよなよなエール」公式サイトより

でもその人にとって、ヤッホーブルーイングが、ずっとそばにいる存在になれることが大事なんです。私たちとファンの間に細く長い線を何十万、何百万本と引けることを目指しています。

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