「楽しい仕事」が客に伝わっていった
【山口】ネット通販に力を入れ出した2004年頃から、ヤッホーブルーイングの業績はV字回復を遂げていますが、その頃、井手さんが心掛けていたことは何かありましたか?
【井手】「仕事を楽しむ」ことですね。ウェブマーケティングの技術的なことは机上で学べるんですが、心のあり方は学んで身につくようなものではありません。大事なのは技術よりも絶対にマインド。イヤイヤ仕事をしている人の書いたメルマガは、それがにじみ出て伝わってしまうし、「辛い、しんどい、楽しくない」と思いながら立てた企画が、誰かを幸せにするはずがない。だから、「楽しく仕事をする」ことをとにかく意識していました。
すると実際に、お客様の反応が変わってくるのがわかったんです。メルマガに好意的な返信が届くようになったり、ウェブのイベントを面白がってくれる人が増えたり。それで、「この考え方で間違ってないんだ」と自信が持てて、社員にも仕事を楽しむことを目指してもらいました。まず、自分たちが幸せになろうと決めたんです。
【山口】「仕事を楽しく」「社員が幸せに」といったことは、いま、どの企業も目指しているところだと思いますが、実際には難しいですよね。そういった組織文化の改革に早いうちから取り組んでこられたからこそ、いま、御社は外から見ても熱量が伝わる企業になったんですね。
【井手】そうだと思います。でも、こればっかりは、「楽しくなれ」「幸せになれ」といったところで変わるものではありませんよね。模倣が困難なものではあると思います。
2010年、40人から始まったファンイベント
【山口】ヤッホーブルーイングは、ファンイベントをとても大事にされていますよね。
【井手】そうですね。最初のイベントは2010年の恵比寿でした。私は2008年に星野から社長を引き継いでいたのですが、もともと小さな会社ですから、そんなに大きなイベントができるような予算もありません。
でも、どうしてもウェブだけの交流では物足りなくて、どんな人たちがうちのビールを飲んでくれているのか直接会ってみたくなったんです。それで、社員の手弁当で、40人限定の小さなファンミーティングを開催しました。