隣の席の人が困っていてもどう声をかけていいかわからない
新入社員研修をはじめ企業研修を手がけるALL DIFFERENTの根本博之CLM(最高育成責任者)も今年の新入社員研修を通じて「非常に素直で前向き、かつ指示したことを丁寧に進めようとする傾向がある」との印象を持ったという。一方で新入社員研修中に、隣の人が何か困った様子でも声をかけようとしない場面を見かけたという。
根本氏は「どのように立ち振る舞えばよいのかわからないので様子を見ていたようだ。挨拶するにもどれぐらいの声の大きさでやればいいのか、人とすれ違ったとき、本当に声を出して挨拶してよいのかもわからない。こうやればいいよと指示すると、とたんにやり出す。裏を返すと、失敗したくないという思いもある。一昔前から『正解探し』の傾向があると言われていたが、それがより強固になった印象を受ける」と語る。
職場での新たな人間関係の構築でも不安な要素を持つ。根本氏は「人の様子を察して声をかけるとか、何かやることありますか、といった“察する力”が足りないように思う。コロナ禍の4年間、大学でも家でも目の前のパソコンに向き合い、周囲に気を配ることもなく、正解を探す日常を送ってきたので。自然と鍛える場がなくなってしまったからではないか」と語る。
「わざわざ出社する必要なくない?」
こうした特性を持つ今年の新入社員への接し方や指導法を一歩でも間違えると離職の引き金になる可能性もある。前出の平野所長は「転職はアグレッシブな行為であるが、そこまでアグレッシブな新人は多くないと思う。ただし、嫌なこと、自分には無理と思ったらファーストキャリアだし、辞めてもいいやという感覚はほぼ全員が持っているのではないか」と指摘する。
その上で「例えば学生時代に在宅でのオンライン生活を長く強いられたため、惰性的に対面で何かをやらせるのはリスキーだ。『これってわざわざ出社して対面でやる必要なくない?』とか、『タイパ悪くない?』といった上司の世代とは違う価値観を持っている。働き方のスタイルにギャップを感じたら転職を考えはじめる可能性はある」と語る。