アプリを見せて楽天ポイントを貯めつつも、支払いは「PayPayで」

5年前、いまのようなキャッシュレス環境になる前の時代には、日本で一番使われているキャッシュレス決済ツールはSuicaなどの交通系ICカードでした。そして2位グループにいたのが楽天Edyです。これらの決済手段はソニーが開発したFeliCaという非接触チップを利用する新サービスとして出現したのですが、残念ながら普及の道半ばでキャッシュレス決済の主流はQRコード決済に移ってしまいました。

そして楽天ポイント経済圏の前に立ちはだかるようになったのがPayPay経済圏です。「キャッシュレスの利用頻度」で調査をするとPayPayは圧倒的な日本一の決済手段になってしまいました。

ここが人間の行動の不合理なところです。もともと楽天ポイントが好きで集めて、楽天ポイントがタダだからと楽しく使っていたのが日本人ですから、キャッシュレスでも楽天ペイが日本一になりそうなものなのですがなぜかそうならない。理由はおそらくアプリの使い勝手にあります。

楽天ペイでは本当は楽天ポイントを使えます。でもユーザーがそのことをよくわかっていない。スマホアプリに楽天ペイと楽天ポイントそれぞれのアプリを入れていて、買い物をしてポイントを受け取るときには楽天ポイントアプリを開いてレジで見せて、支払いになると「PayPayで」と消費者が経済合理的ではない行動をしてしまっているのです。

写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
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アプリを統合したほうがユーザーの行動を変えやすい

この問題を打破するために必要な対策もおそらく心理的なものです。何しろこのゲームのルールは行動経済学なのですから。

たとえばお店で支払いのときにまず楽天ポイントをもらうための画面を開きます。そこでバーコードをスキャンしたら「楽天ペイで払えばポイントが当たるスクラッチチャンス」みたいな音声が出るようにするとします。それでワンタップで決済画面が出るのだったら楽天ペイを使う人は心理的に増えるかもしれません。こういった対策をするためには、楽天ポイントのアプリと楽天ペイのアプリが統合されていた方が変えやすいのです。

ただここまでの話では謎が半分しか解けません。楽天ペイがPayPayよりも弱いことからそこを補強することで楽天ポイント経済圏を強くしようというところまではわかるのですが、それでどう楽天が儲かるのかがいまひとつ判然としないのです。