旅行がメンタルヘルスにいいワケ

旅行がメンタルヘルスに良い理由を、図表2にまとめてみた。

旅行が良好なメンタルヘルスと関連する機序としては、旅行中は、ふだんより多く歩き、身体活動も増加する。日光も浴びることで、生体リズムの調整やセロトニンなど脳内の神経伝達物質にも好ましい影響が生じる。なにより旅行の計画立案、そして新しい経験は、脳を使い刺激する経験にほかならない。メンタルヘルスの観点からも、旅行は単なるリフレッシュ以上の効能があると考えられる。

「混んでいてどこも行けない」官製・一斉休日の制度疲労

心身の健康にとって重要な旅行だが、日本国民が旅行する環境は、悪化の一途を辿っている。特に今年の連休は、「とにかく混んでいる」「どこに行くにも出費がかさむ」と、旅行どころか近場への外出も、二の足を踏んでしまっている人も多いだろう。年末年始やゴールデンウィーク、夏休みは、本来ならばリフレッシュできて楽しい時間のはずだ。

しかし、コロナ禍も過ぎた昨今では、わたしも含めて、旅行がしづらくなってきていると感じている人も多いはすだ。物価の高騰による生活費の切り詰めもあるが、やはり、インバウンドによるオーバーツーリズム、円安による海外旅行抑制が問題だ。自国民が旅行に行きづらいこのような状況は、ウェルビーイングを毀損しているように思えてならない。

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このように心理的にプラスの影響を与える旅行に行きづらくなるのは、もったいないどころか、心身の健康や充実した人生の損失とも言える。さらには、オーバーツーリズムによって、観光地の住民のウェルビーイング低下が懸念されている。X(旧ツイッター)で、京都の街のゴミ箱がゴミで溢れてしまっている写真が流れてきて、わたしもイヤな気持ちになった。日本は公衆のゴミ入れが極端に少ないせいもあるが、住民が観光客に対してネガティブな印象を持ってしまうのも仕方がない。オーバーツーリズムは、旅行に行く人にも行かない人にも、良くない影響を与えている。

コロナ前においても、特にゴールデンウィークでの電車や飛行機、高速道路の渋滞の酷さは、毎年指摘されていた。インバウンド観光客で既にパンク状態のところに、日本人の人出も一時的に急増する。観光地では、あまりの混雑にサービス低下だけでなく、安全の問題が生じてしまう危険もあるかもしれない。これも、一斉休暇という文化に、以前にも増して強い疑問を持たざるをえない社会変化だ。