iPhoneを抱えるがゆえに乗り遅れたアップル
一方、米国の株式市場では、マグニフィセント・セブンの中での優勝劣敗の選別が進んだ。世界的なEV需要の増加ペース鈍化などから、テスラの脱落懸念が高まった。不動産バブル崩壊で中国の需要は減少し、欧州や米国では政府の計画通りにEVの普及が進まなかった。欧州委員会が中国製EVに関税を賦課する恐れが高まったことも、上海で生産を行うテスラの業績懸念を高めた。
次に、アップルの株価が怪しくなった。エヌビディア、マイクロソフトなどに比べ、アップルは生成AI分野での成長戦略が遅れた。iPhoneという有力製品の存在感が大きすぎるため、環境変化に遅れたともいえる。さらに今年3月、米司法省は同社を反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴した。欧州委員会もデジタル市場法(DMA)違反の可能性で調査を開始した。
グーグルの親会社であるアルファベットの脱落懸念も高まった。2023年10月~12月期決算で広告事業の売上高は市場予想を下回った。欧州委員会はグーグルに関してもDMA違反の疑いで調査を行う。
「生成AI分野の戦略」が明暗を分けた
残る4社、エヌビディア、マイクロソフト、アマゾン、メタを“ファビュラス4”として注目する投資家は増えた。これら4社の共通の要素として、大規模言語モデル(LLM)の強化による生成AI関連事業の成長期待がある。それぞれの業績拡大ペースに違いはあるものの、生成AI分野での成長戦略によって選別が進んだといえる。
筆頭役がエヌビディアだ。3月に出荷が始まった先端のAIチップ“H200”は、既存のH100チップに比べて生成AIの処理速度が最大で45%高まる。年内にエヌビディアは次世代チップの“B200”も投入する計画だ。B200とCPU(中央演算装置)などを組み合わせることで、処理能力は既存のAIチップの約30倍になるという。
AIの学習強化に欠かせないGPU(画像処理半導体)分野では、米AMDも競合製品を投入し競争が激化しつつあるが、市場の80%程度のシェアを持つエヌビディアの優位性が簡単に揺らぐとは考えづらい。エヌビディアは、AIチップの効率的な利用を支えるソフトウェアでも競争力が高い。