開発から半世紀かけて販売数1000万台を達成

ノズルも長短2つを連結した「游星ダブルノズル」にして、1992年に新商品を投入しました。つまり、顕在ニーズの改良をしたのです。しかしこれまた売れませんでした。

三宅宏『世界はマーケティングでできている』(総合法令出版)

問題は、キッチンの狭さが普及の邪魔をしていることです。今度は設計者、企画担当者、デザイナーも一緒に顧客の台所現場を見に回りました。顧客の台所にプロトタイプ4台を70世帯に持ち込み、実際の声や感覚的な意見を丁寧に聞きとりました。この結果をもとにあらゆる機能や部品を総合的に見直したところ、1995年に待望の100万台を突破しました。

さらにコンパクトにした新商品(1999年)は、狭い集合住宅でも設置の可能性が3倍に高まりました。環境意識が高まっているエコの時代に、節水に挑戦した「ナショナルの食器洗い節水力」というコンセプトで業界最小の節水力を実現しました。「汚れはがしミスト洗浄」(2004年)による口紅や渋茶の汚れ対応、「除菌ミスト」(2005年)による衛生意識、「エコナビ搭載」による省エネ意識への対応などその時々の顧客ニーズを把握してタイムリーな商品化を行いました。

2002年に累計300万台、2006年に累計500万台、2017年についに1000万台を達成しました。開発技術者、企画担当者、デザイナー、営業スタッフをも巻き込み、顧客とのキャッチボールを通じて、顧客の顕在ニーズや潜在ニーズを把握しようとする姿勢。それに対応したあくなき商品開発と投入が、半世紀を経てようやく実を結んだのです。実に長い道のりです。

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