最初から脱落していたのがむしろ良かった

つまり、なまじっか同期の人間がいると、同期に負けまいとして、一生懸命走るでしょう。互いに負けまいとして、お互いに自分のペースより早く走ってしまう。「あいつが早く走っているから、俺ももっと早くしなきゃ」と。すると相手も、「あいつ、スピード上げたな」とスパートをかけたりするでしょう。悪循環になる。だから息切れしちゃって、倒れる、リタイアする。

僕は幸いなことに最初から脱落して、横を見ても誰もいないわけ。こんな楽なマラソンレースはないと思う。僕は比較的主体性のない人間だし、頭も良くないから、同期がなまじっかいたら、僕は彼らと無益な競争をやって疲れ果てたんじゃないかと思う。あるいは走り過ぎて、心臓がダメになったりね。

ところが幸いなことに周りに競争相手が誰もいなかった。初めから落ちこぼれてたから、無理に走る必要がない。最初からマイペースで走ればよかった。これが、僕がこの年になって、なおかつ走れている最大の原因ではないかと思う。もちろん、自分のペースをつかむのは、とても難しいことです。僕もこう言えるようになるまではずいぶん悩んだ。

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値引き競争で差別化するのは難しい

ニチイというスーパーマーケットの社長、小林敏峯さんに会った時に、彼は商売のペースをつかむのにずいぶん苦労したという話を聞いた。ニチイは今、スーパーマーケットから脱皮しようとしているんです。

小林さんは、その時、「値ごろ」という言葉を盛んに使った。これがニチイのコンセプトらしいんです。「値ごろって何だ。なぜスーパーから脱皮するのか?」と訊くと、彼はこう言った。これまでのスーパーは値段の安さで勝負してきた。普通の専門店やデパートより安いことで勝負してきたわけでしょう。

ところが東京にしても大阪にしてもスーパーはたくさんある。スーパー同士が値段の競争をしていくと、これ、いつかは必ず限界が来る。最初は値段の競争をするために店を大きくする。大量仕入れをする。でも、相手も同じことをする。同じ相手と価格の競争をすることは、どこかに無理が生じる。

たとえば、メーカーを泣かせるか、問屋を泣かせるのか。あるいは従業員を低賃金で長時間労働でこき使って、従業員を泣かせるか。これは長続きはしない。メーカーも問屋も、どんどん離れていく。従業員を泣かせたら3K産業だといって誰も来なくなる。それでもスーパーは安いんだといって勝負しなければならないから、今度はバーゲンセール、大売り出しをやる。その時に目玉商品を作る。洗剤だとかね。これは赤字覚悟で安くして客を集めるわけ。集めて目玉以外の商品も買ってもらうことで、採算をとっていくやり方だ。